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『……っはぁ、はぁ』
階段を駆け下りて、城から逃げるように飛び出す私。
ジョンハンと名乗った王子様は、綺麗な髪をなびかせながら私を追いかけてくる。
ミンギュは階段の下にいて、私を待っていてくれた。
あと少し、という所で足がもつれ、ガラスの靴が片足から脱げてしまった。
『…あ！！』
「危ない！」
ミンギュが咄嗟に支えてくれたおかげで怪我はしなかったが、ガラスの靴を置いてきてしまった。
『靴が…！』
「…だめだAちゃん、時間がない！」
ミンギュはそう言うと、ひょいと私を抱えて馬車に乗り込んだ。
御者が素早く馬車を走らせ、王子様とお城は遠ざかって行った。
しばらく息が切れて何も話せなかったが、落ち着いた頃にミンギュは私に問いかけてきた。
「…王子様とお話できた？」
『あぁ…、うん。すごく優しかった。』
「ちゃんと踊れた？」
『初めてでよく分からなかったけど…、王子様が教えてくれて…。楽しかった』
あの時、踊りに誘われた私は緊張しすぎて、初めてである事を伝えてしまった。
すると彼は私を馬鹿にすることもなく、優しく笑って一緒に踊ってくれたのである。
本当に嬉しくて、王子様に受け入れてもらえた気がして、幸せで。
『夢みたいだったな…』
「よかったね…、Aちゃん」
そう呟くミンギュは、また何故だか寂しそうに笑っていて、その表情がなんだかとても気になってしまう。
遠くでは0時を告げる鐘の音が暗闇に鳴り響く。
『ミンギュ、どうしたの？寒い？』
体調が悪いのかな、と心配になってきて、今度は私が彼の手を握る。
するとミンギュはそっと俯いて、言うべきか言わざるべきか迷うようなそぶりを見せてから小さく呟いた。
「……俺がお願いしたんだ。Aちゃんを幸せにして下さいって…。ずっと…、星に祈ってたんだ。」
『……星に…』
「うん…。」
『ありがとう…ミンギュ…』
あの寒い小屋の中で、自分じゃなくて私の幸せを願っていたと、彼は言う。
私は暖かな気持ちと切ない気持ちが混ざった複雑な感情に戸惑いながらも、ミンギュの優しさが嬉しくて彼の頭をいつもみたいに撫でた。
彼はいつもみたいに顔を擦り寄せてきて、そしていつもはしないキスを手の甲にした。
「…もう時間だね。」
『ミンギュ…？』
「幸せになってね、Aちゃん」
0時を数分過ぎて、魔法は解けた。
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月の民(プロフ) - イチさん» イチさん、読んでくださってありがとうございます！そして温かいお言葉、本当に本当に嬉しいです…！これを励みに、これからも頑張りますね^^ (2018年3月20日 1時) (
レス) id: fdbe7baf4f (このIDを非表示/違反報告)
イチ(プロフ) - どのお話もとても面白かったです………！それぞれの個性と話の内容がマッチしていてどんどん読み進めてしまいました。とても面白かったです、これからも更新頑張ってください。応援しています！ (2018年3月20日 1時) (レス) id: 783077e291 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月の民 | 作成日時：2018年3月18日 11時
