Fin. ページ25
ウォヌside.
俺とAは月の住人だった。
俺たちは好き合っていて、けれど身分の差もあったから、簡単には結ばれない。
好きになってはいけない人だった。
障壁はあったが二人で結婚の誓いを立てていた矢先
俺は罪を着せられた。
そして
一人で地球にやってきたのだ。
愛する人を置いて。
まるでそこにいるのが当たり前のようだったのに。
何もかも忘れてしまった俺は孤独で、ただ時々どこからか聞こえる異国の歌に心を救われていた。
あれはAが月から歌ってくれていたのだと、今なら分かる。
何年も月日は流れ、Aは俺を追って自らこの場所に来た。
それがあの夜からの出来事。
俺の罪はとっくに消え失せているという内容の巻き物を読んで少ししたら、記憶が全て戻った。
「頭が痛いな…」
溜め息をついて巻き物をしまう。
窓の外を見ると、やけに明るく光っているのが分かった。
今夜は満月だ。
A、君も月を見ているか？
今日の月はとても綺麗だ。
俺のために歌って。
愛してるよ。
どの言葉も今なら全部君に伝えられる。
＿＿＿カタン
外で、物音がする。
もう抑えきれなかった。
俺はすぐに立ち上がって、裸足のまま外に出ると
迷わずAを抱き締めた。
Aは随分驚いていて、それでも俺の背中に手を回してくれた。
静かな沈黙が流れる。
俺たちの間に余計な言葉はいらなかった。
今までは。
『……ウォヌ』
「ん」
『私のために歌って』
「あぁ、月が綺麗だな」
噛み合わない愛の言葉ではあるが、俺は嬉しかった。
.
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月の民(プロフ) - イチさん» イチさん、読んでくださってありがとうございます！そして温かいお言葉、本当に本当に嬉しいです…！これを励みに、これからも頑張りますね^^ (2018年3月20日 1時) (
レス) id: fdbe7baf4f (このIDを非表示/違反報告)
イチ(プロフ) - どのお話もとても面白かったです………！それぞれの個性と話の内容がマッチしていてどんどん読み進めてしまいました。とても面白かったです、これからも更新頑張ってください。応援しています！ (2018年3月20日 1時) (レス) id: 783077e291 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月の民 | 作成日時：2018年3月18日 11時
