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2人があの光る竹の下で出会ってから2週間が過ぎた。
ようやくお互いを名前で呼ぶようになり
仕事を2人で分担するようになった。
『ウォヌくん、お皿洗ったよ』
「ありがとう、A」
彼女は名前をAと言うらしく、やはりこの国のものではないらしい。
しかし言葉は通じ合っていた。
なんとも不思議なものである。
そしてもっと不思議なのは、彼女はあの夜の日以前のことを何も覚えていないということだった。
分かっているのは自分の名前だけ。
そして一週間経ってなお、彼女はどこか光り輝いているように見えること。
ある夜、晩酌をしながらウォヌは家にある本棚から「竹取物語」という古い書物を手に取った。
Aは新しい竹籠を編んでおり、時々、ウォヌの方へ目をやった。
何処かで見たことのあるシーンで頭に焼き付いて離れなかったあの光景を、以前どの本で知ったのか思い出したのである。
その書物には、「かぐや姫は月で罪をおかし、地球へと流されてきた。
いずれ使者が迎えに来て、地球での思い出は全て忘れ去る」と書いてあった。
「……そうか。」
ウォヌは納得がいった。
きっと彼女は月の住人で、いつか記憶を取り戻して居なくなってしまうのだ。
そう思うとどうしようもなく悲しかった。
「…A」
『どうしたの？また歌を歌う？』
Aはウォヌを振り向いて、優しく微笑んでみせる。
暗い家の中で薄ぼんやりと美しく光り輝く彼女はもう、月の住人にしか見えなかった。
ウォヌは彼女を抱き締めて、小さく頷いた。
「…俺のために歌って」
彼女もウォヌに応えるように頭を優しく撫でて、少し寂しそうに笑みを浮かべながら、あの歌を歌った。
ウォヌもAも、歌が好きだからか、毎日よく歌を歌った。
ウォヌはAのために
Aはウォヌのために
言葉では愛を伝えられない2人に、歌は言葉の代わりだった。
いつかお互いを失ってしまうのが怖くて、言葉では伝えられなかったのだ。
そしてお互いそれをよく分かっていた。
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月の民(プロフ) - イチさん» イチさん、読んでくださってありがとうございます！そして温かいお言葉、本当に本当に嬉しいです…！これを励みに、これからも頑張りますね^^ (2018年3月20日 1時) (
レス) id: fdbe7baf4f (このIDを非表示/違反報告)
イチ(プロフ) - どのお話もとても面白かったです………！それぞれの個性と話の内容がマッチしていてどんどん読み進めてしまいました。とても面白かったです、これからも更新頑張ってください。応援しています！ (2018年3月20日 1時) (レス) id: 783077e291 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月の民 | 作成日時：2018年3月18日 11時
