Fin. ページ18
ミンハオside.
迎えに行くだなんてかっこいい事を言ったけど
結局、かえるから戻れはしなかった。
かえるから戻るために必要なのは「愛する人とのキス」
このままAのとこに戻るくらいなら、一生かえるとして生きてたほうがマシ。
なんて、思ってたんだけど。
あの湖でずっとAを見ていて思った。
きっと俺は、もうこの子しか愛せないんだろうなって。
覚悟が決まったのは、奇しくもAが嫁に行けるようになった日だった。
「武術なら俺が教えてあげようか？」
Aと初めて出会った時も、こんな風に声かけたっけ。ちょっと生意気に言ってみる。
思い出してくれないかな、なんて一縷の望みを込めて。
普通に話せるだけでも嬉しかったけど
「嫁入り道具」なんて言うから、誰かの所に行くんじゃないかって焦った。
「Aちゃんの手、ベタベタ」
『そっ…そんなことないもん。ミンハオでしょ！』
昔っから手のひらが汗っかきで、手を繋いではよくからかってたから、つい意地悪を言ってしまった。
小さい時はよく病気してて、よくお見舞いに行っては寝てるAの頭を撫でてやった。
それなのに今度は俺がかえるの時に頭なんて撫でるから、恥ずかしくて嬉しかったんだ。
湖のほとりで数日前の自分を反省しては、後悔していた。
やっぱり会わなければよかった。
「お前、本当に俺を覚えてないんだな」
『……？…うん…』
ショックでその場にいられなくて、逃げ出してしまった。
情けなくて仕方ない。
『ミンハオ！』
と、もう一度呼んでほしい。
『ミンハオ、ミンハオ！！こっち向いて！話したい事があるの』
俺の妄想にしては、やけにリアルだ。
湖面に映った月を一瞥してからそっと辺りを見回すと、そこには本当にAがいた。
驚いて何も言えずにいると、Aは俺を手のひらに乗せた。
明るい月に照らされて、やけに神秘的で、なんだか別の世界みたいだ。
『…ミンハオ、ずっと私を思っててくれてありがとう』
「……でも、俺は…まだ…」
『関係ない。……ミンハオは私の王子様でしょ？迎えに来たよ。』
そう笑って俺に囁いたAの笑顔はとても綺麗だった。
湖面の月は眩しく輝いて、Aも月も綺麗だと思った。
それから静かに1人と1匹の影が近づいて
やがて2人になった。
「お前の手、ベタベタ」
『うるさい！ミンハオが、でしょ！』
.
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月の民(プロフ) - イチさん» イチさん、読んでくださってありがとうございます！そして温かいお言葉、本当に本当に嬉しいです…！これを励みに、これからも頑張りますね^^ (2018年3月20日 1時) (
レス) id: fdbe7baf4f (このIDを非表示/違反報告)
イチ(プロフ) - どのお話もとても面白かったです………！それぞれの個性と話の内容がマッチしていてどんどん読み進めてしまいました。とても面白かったです、これからも更新頑張ってください。応援しています！ (2018年3月20日 1時) (レス) id: 783077e291 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月の民 | 作成日時：2018年3月18日 11時
