毎日甘やかしてくる彼【石上優】【かぐや様は告らせたい】 (ページ4)

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この小説を読んでいる間に少しでも現実世界から目を背けられるよう、精一杯お手伝いさせて頂きますページ4

｢ごきげんよう｣

｢ごきげんよう｣

そんな挨拶をする女生徒の合間をいつものように通り抜け、Aさんの元へ向かう。

誰のやら知らない香水の香りがあちこちから漂ってくる。当然生徒の物だろう。どうせ二、三万位する高いやつ。

今更ながらこの学校には金持ちが多い。僕みたいな一般人は息を潜めて教室の隅で本でも読んでるのが正解だ。

だってほら、愛しい愛しい僕の恋人だって……

｢四宮先輩、それは最低です。チョコレートの手順は絶対に……例え一手間でもサボっちゃいけません。きちんと心を込めて、相手の為に誠心誠意丁寧に一手順一手順何度も繰り返すべきです。
そうしてチョコレートの中に愛は形作られていくんですから｣

｢料理に愛なんて不確かな物は必要ありません。効率良くするのに誠意など必要ですか？一回一回愛など込めていればレストランは経営破綻します。貴方の所の菓子屋だってそうでしょう｣

あの四宮家のご令嬢に堂々と自分の意見を……やっぱり名家の娘さんは違うな。

Aさんの家は戦前まで爵位を持っていたらしい。元華族で洋菓子会社を何百と束ねあげる親会社の箱入り娘、正真正銘のお嬢様。

時代が違えば、彼女は姫か……

本当、なんで僕みたいなのが付き合えてるんだろう。

『Aさん。四宮先輩相手になーにチョコレート説いてんの？』

｢あ、優さん。優さんも言ってやってよ、チョコレートは気持ちが大切だよね！？世界一のパティシエが作った温情もクソもないチョコと私が愛情込めて作った形の崩れたチョコ、どっちを食べたい？｣

『Aさんが作ったのに決まってるじゃん』

｢ほら見ましたか四宮先輩！愛は効率より大切なんです！｣

｢今のは石上くんに訊いたからです。そもそも貴方が作ったチョコの形が崩れるなんてまず有り得ないでしょ｣

それはそうだ。

『どうでも良いじゃないですか？お二人が思うように作ったら良いんですよ。きっと会長はどちらでも喜んでくれますから』

｢私は会長の事なんて言ってないわ！｣

『Aさんもな、愛情が大切だと思うならたっぷり込めて作れば良いんだぞ？わざわざ競り合わなくても、僕はなんでも嬉しいから』

｢……まぁ、優さんが言うなら……沢山込めてあげるね｣

こんな可愛らしいお嬢様をすっかり手懐けてしまった僕も、四宮先輩を手篭めにした会長と同類、という事だろうか。