嫌われていた筈の僕【石上優】 (ページ36)

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｢あの……甲斐、傲慢な事を言うかもしれないけど……
良かったら、今日は俺の家で時間潰さない？
今日は存分にわがまま言って貰って良いし、怒らないから……｣

少し、下心が見えてしまっただろうか。

｢……良いの？｣

｢うん、甲斐が良いなら……｣

気分沈んでる甲斐見るのはあんまり好きじゃないし……

どうせ一緒に居るなら、甲斐には笑っていて欲しいというのが僕のせめてもの願いだ。

｢私、一回抱きしめられながら頭を撫でて貰いたかったの……友達にこんな事頼むなんて、はしたない、わよね……｣

そんなわがままならいつでも全然welcomeだ。

いつもの威勢が良く気が強い所とそういう可愛らしい所のギャップで強く胸が締め付けられる。

髪サラッサラやなこいつ……元々髪質が良いのか、はたまた手入れを怠っていないのか……肌もつやっつやだし、なんだこのお手本みたいな可愛さは。

｢も……もっと、近くに来て欲しい……｣

そう言って、自分の方から擦り寄ってくる甲斐。流石モテ女、男を落とすやり方を分かっている。

校舎裏とか人気の無い所は僕の庭(？)だから、そこでゲームやら持ち帰った仕事やらしていると、度々そこで甲斐が告られているのを見る。

毎回きちんと振ってくれるから僕としては安心するのだけど、如何せんこの女は時々酷い振り方をする。

｢ごめんなさい……私、自分より頭良い人しか好きになれなくて……｣

とか、当人のスペックを否定しながら言うのだ。安堵こそすれお前の方が莫迦認定は流石に酷いと思うし、何より甲斐の場合その条件は滅茶苦茶ハードルが高い。

あ……でも、甲斐より順位が高い奴が告ってきたら甲斐はどう答えるんだろう。また高度な条件を付け加えるのだろうか、それとも……

付き合っちゃう、とか。

自分で考えて怖気がした。あー、嫌な場面想像しちゃった。

僕より頭が良くて優しくて、甲斐と付き合えるスペックを持った奴が彼女と一緒に歩いてる……

鳥肌が立った。僕に向けているこの愛おしい目を、他の男に向ける？そんな事考えたくない、させたくない。

｢石上、あの、ちょっと力が強す、ぎっ！？いっ、た｣

｢あ、ごめ、考えてた事と現実とのバランスが｣

甲斐の頬に触れる。うわもっちもちやな、最早スクイーズなんじゃ。

｢……ん、よく分かんないけど……もっかいしても、良いよ……痛くされた後に優しくされんの、結構良い｣

……変な性癖に目覚めさせてしまったかもしれない。