学者様はむくれたい ページ33
｢へぇ、ここがなんでも研究部ですか｣
『あぁ。優少年、お花好きだったろ？こっちに植物の研究レポートがあるんだ』
｢いや、僕はそんなガチの方じゃなくてエンジョイしてるだけの花好きなので……｣
やんわりと否定せずに遠慮する優少年。
『あのね？優少年にはいつか言おうと思ってたんだけど……』
｢……？なんですか？｣
うぅ〜ん、やっぱり恥ずかしいなぁ……
『その、ね…？優少年、私達が婚約した暁には……宝石を使った婚約指輪を作らないか？』
きゃーっ、言っちゃった！
｢……はい？｣
『だからね！優少年の誕生石であるアクアマリンと、私の誕生石であるペリドットを使って指輪を作りたいんだ…！
指輪って、女の子の憧れだろ？』
｢はい、まぁ……男も憧れる人は憧れますが……ダイヤモンドとかじゃなくて良いんですか？｣
『……私は、そんな…皆が喜ぶような、有り触れた指輪じゃなくて…優少年と私だけの、唯一無二の指輪が良い』
…ちょっと、我儘かな？
優少年は呆気に取られたような顔をして、すぐにプッと吹き出した。
｢先輩、わざわざこんな神妙な面持ちでこんなくだらない事…あははっ、やばっ、笑いとまんな…ははっ｣
『ひ、酷くないか優少年…？』
私は勇気を出して頑張ったのに……
｢そんな事、今じゃなくてもいつでも言ってくれれば手配出来るのに。
そんなっ、子供作るみたいに真面目に…ははっ、思い出したらまた……はははっ｣
そんな笑う事か！？
｢あー、笑った笑った…一週間は笑えますね、これで｣
『や、やめてくれよ…今になって恥ずかしくなってきたじゃないか……』
どうせ優少年にとってはくだらない事なんだろうけど、私にとっては大事な事だし……
結婚指輪って一生残る物だし、今から準備しても早くないじゃないか……
むううっと私が膨れていると。
｢そんな顔しないでください。可愛い顔が台無しですよ｣
優少年が屈みこんで、私の頭を意外と大きくて骨張った手を使って撫でる。
赤ちゃんみたいに扱われるのも、たまには悪くないかも……？
｢僕は別に指輪の件を笑ってるんじゃなくて、先輩が言えば、なんでも用意してあげますよ？
可愛い洋服だって化粧品だって、それこそ指輪だって。だから、A先輩は安心して僕に甘えてください｣
────────あー、これだからズルいな、私の彼氏は。
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2021年3月15日 16時
