学者様はキスしたい ページ18
｢……｣
『……』
どうしよう、私、優少年とキスしたい……
あの薄くて形の綺麗な唇で、私のファーストキスを奪って欲しい。
願わくば突然、強引に……
｢あの、A先輩。｣
『なんだい？』
でも、きっとこの気持ちが届く事はないのだろう。
私は優少年に本当の自分を見せていない。
己の醜い所を見せて幻滅されたら。嫌われたら。
そう考えると、どうしても嘘を
沢山努力して、準備して、最高に完璧で可愛い霧神Aを優少年に見せる。
弱いな、私。
本当はこんなのいけない事だって判ってる。
もう恋人なんだから、好きだって言ってしまったんだから、本当の私を見せなきゃいけない。
でも、私は生憎、そんな勇気は持ち合わせていない。
全部全部嘘で塗りたくって、作りだしたAじゃないと優少年は好きだと言ってくれない。
本当の可愛くない私なんて、絶対誰にも見せられないんだ────────。
｢好きです。｣
『……そうかい。私もだよ。』
｢A先輩、何か僕に隠してるでしょ？いえ別に、隠したままでもいいんですけど。
でも何か、大きな嘘を吐いてないですか？｣
こっちを向かずに、表情のわからないまま優少年は言う。
『…なんで、判るの。』
｢いや、見てたら誰だって判りますよ。それが好きな人なら尚更。
僕はA先輩のプレッシャーも責任も判ってるつもりですし、今更追求する気もないです。
先輩はそういう人だって事、知ってますから。｣
『そういう人？』
｢自分でもわかってるんでしょ？A先輩は嘘吐きだ。特に僕相手に沢山嘘を吐いてますよね。｣
『なんでそう思うの。』
｢眼見れば判ります。貴方は一生懸命努力して僕に可愛いA先輩を見せる。
僕は可愛くない、めんどくさくてドロドロした性格のA先輩も好きですけどね。｣
優少年は変態……？
『でも、私が優少年を束縛したら不快だろう？君だって盛りのついた男子だ。
いっぱい女の子と遊びたいだろうに。』
｢ははは、僕にそんな相手いませんよ。僕にとってA先輩が一番大切な女の子なんですから。
そんな人を放って遊ぶなんて、僕には出来ないです。｣
『けれどね、
｢自業自得すぎませんか？｣
『それ位しないと、誰も私なんて見てくれないんだよ。』
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2021年3月15日 16時
