石上優は伝えたい ページ13
｢んーっ……もうそろそろかな｣
『あっ…A先輩、待ってください』
結局来てしまった、三年の進路相談。今告るんだ、呼び止めたら後には引けない。
『A先輩、一先ずスタンフォード合格おめでとうございます。後輩としてとても誇らしいです』
｢はは、ありがとう。キツい受験勉強から解放されるのはとても嬉しいよ｣
『……A先輩はやっぱり、海外に行って鉱石について学びたいですか？』
｢あぁ、勿論。私は石が大好きだからね｣
『……そうですか。そういえばA先輩、覚えてますか？二人で夏祭り行ったの』
｢あぁ勿論、覚えているとも｣
『そうですか。ねぇ、A先輩。あの時のお願い、まだ叶えてもらってませんでしたよね？』
｢…あぁ、そういえばそうだったね｣
『そのお願い、ここで使ってもいいですか？』
｢勿論。私に出来る事だったらなんでも言っておくれ｣
僕は卑怯だな。こんな手を使ってまで、A先輩を引き止めるなんて。
『無茶を承知で一生に一度のわがまま言わせてもらいます。海外に行かないでください、A先輩』
｢！……それはそれは。優少年、判ってるのかい？それは…｣
『判ってますよ、当然。今までのA先輩の努力を踏みにじる行為なのも、最低なのも判ってます。
僕がこんな狡い手段を使わないとA先輩を引き止められない弱い奴なのも…全部、判ってます』
｢優少年…｣
『でも僕は！どんな狡い手段でも、どんなに批判されても、A先輩と一緒にいたい。
僕にもうちょっとだけ、時間をくれませんか？』
僕の想いをそのまま言葉にした、一生に一度のわがまま。
────────伝わってくれるといいな。
｢……ははは、やっと言ってくれた。嬉しいよ、優少年。君が言うなら海外進学は無しにしよう。
私っ、なんの取り柄も無い奴だから……！
君の名字を使って振られた時の予防線張ってるような、臆病な人間だから……！
優少年が私と同じ気持ちになってくれて、凄く嬉しい。
なんだろうね、この気持ちは…？とてもぽかぽかして、ふわふわして……すっきりしたよ｣
『じゃあ、もう一度わがまま言っていいですか？』
｢勿論。君の頼みならなんでも聞くよ｣
『A先輩、好きです。僕と付き合ってください』
｢─────はい、喜んで。｣
僕に向かって飛び込んできたA先輩は、今まで見た事無い位の笑顔だった。
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2021年3月15日 16時
