“元”不登校様は告らせたい【不登校ネタ】 (ページ22)

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六十八話ページ22

｢優｣

『A！』

大好きな声が聞こえて振り向くと、やっぱりそこには僕の恋人がいた。

『お兄さんに応援は頼めた？誰にも暴力は振るわれてない？怪我は？昨日はちゃんと寝た？』

｢ふふ、過保護よ。大丈夫…とまではいかないかもしれないけど。ごめんね、優。｣

背筋が凍って、嫌な予感が頭を駆け巡る。

『……まさか……そんな事、ないよな？僕っ、Aと別れるとか、無いよな？』

｢ええ、それは無いわ。私が謝ってるのは、私の家が予想以上に屑だった事について。
……お兄様にお父様を説得する協力を仰いでみたの。そしたら、なんて言われたと思う？
男を孕め、ですって。｣

『……んな、まさか……』

｢私もそう思って、もう一度訊いてみたわ。
……嘘なんかじゃなかった。あの人は屑だった。
今まであんな人を信頼していたと思うと、怖気がする｣

『……お前の一族、全員……屑じゃん』

色んな感情が巡って、思わず乾いた笑いが零れる。

財閥の令嬢と付き合うという事は、相応の覚悟が無いとダメらしい。

｢私の一族……天羽家は、そうやって命を繋いできたの。
そして、その屑の一族に生まれた私も屑。
優も判ってるでしょ？今まで私がどれだけ優に酷い事をしてきたか｣

『違っ…僕は、そんなつもりじゃ……』

屑のスケールが違うだろ。

今までのAの態度はツンデレやプライドが高いだけで済ませる事が出来た。

でも今回は訳が違う。

『男を孕めって…そんな話、この現代にも実在すんのな……』

｢あるわよ、普通に。
優が知らないだけで、家族に交際の邪魔をされるってのは財界ではよくある事。
でもね、私お父様に直談判してきたわ｣

『無茶だ……』

｢そう、無茶なの。でも私、出来たわ。お父様が優との交際を許してくれた｣

『……絶対、何か裏があるだろ。条件とか出された？なら今すぐ教えて。』

｢天羽家の当主になる権利を剥奪して、別れた場合は強制的に婚約を結ばれるんですって｣

『そんな、ダメだろ。A、当主にならないと一族での立場とかあるんじゃ……』

｢ええ。でも、私の事は優が娶ってくれるでしょ？なら私はそれでいい。むしろそれがいい。
私は権力もお金も要らない。優が傍にいてくれればそれで十分幸せだわ｣

『……まぁ、否定はしない』

｢嗚呼、なんて最低で最高なクリスマスなのかしらね！｣

Aの満面の笑みを、どうしても僕は素直に受け入れ難かった。