“元”不登校様は告らせたい【不登校ネタ】 (ページ21)

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六十七話ページ21

『……行ってくるわ』

今すぐここで弱音吐いて泣き叫びたい気持ちを抑えて、私は屋敷へ向かう。

｢A様、お手を｣

『？』

手を差し出すと、東雲はその手を握ってこちらを見た。

｢嬉しい報告を心待ちにしております｣

『……ええ。』

“普通”の女の子なら、きっと父親には毎日会ってるんだろう。

別々に住んでなんかないし、沢山の愛を注がれて育つんだろう。

けれど生憎、私は“普通”なんかじゃない。

父親に会うのは処刑も同じ、出来れば一生会いたくない。

でも今会わなければ私は優と別れる事になってしまう。

そんなのは絶対嫌だ。

『失礼します。』

｢なんだ、別れてきたのか｣

『いいえ。本日はその件についてお話をしたく、誠に勝手ながらお時間頂戴致します』

｢構わん｣

『私は石上優という殿方を何物にも代えがたく愛しています。お父様の言う事も判ります。
ですが、私は彼と一生を添い遂げたいのです。
彼は私が彼を傷つけるような事を言っても私から距離を置きませんでした』

｢家柄目当てだろう｣

『優はそんな人じゃありません！優は家柄目当てに近付くような、穢い人間じゃ……
……すみません、お見苦しい所をお見せ致しました。
私は家を追い出されようと秀知院学園を退学しようと、優とは離れたくありません。
この気持ちは、何をされても揺るぎません。
お父様、お願いします。優と交際を続けさせてください』

｢……はぁ……もういい、頭を上げろ。心底呆れた。たかが一人の男の為にそこまでするか。
判った、その男との交際を続ける事を許す。

ただし。
お前が天羽家の当主になる権利を剥奪すると共に、その男と別れた場合は強制的に婚約させる｣

『お好きに』

優と別れる訳が無い。意地でも添い遂げてやる。

『お話は以上です。失礼致しました。本日はお時間とって頂き、誠にありがとうございました』

｢顔も見たくない、さっさと帰れ｣

言われなくても喜んで。お前と一緒にいるなんてこっちから願い下げだ。

｢A様！｣

『東雲。優とのお付き合いが許されたわ！』

｢…良かった……本当に良かった……会計クンに伝えなくてはいけませんね｣

『ええ。明日学校で伝えるわ』

｢学校で、ですか……そうですよね、A様はもう立派な女子高生です。
……本当に、強くなってくれました｣

さて……今日は早く寝なきゃ。