“元”不登校様は告らせたい【不登校ネタ】 (ページ20)

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六十六話ページ20

｢ふむ……話はよく判った。兄ちゃんも協力してやろう｣

『本当ですか！』

｢あぁ。可愛い妹が困っているんだ、見過ごせる訳ないだろう｣

『ありがとうございます…！』

やっぱりお兄様は優しい。この腐った家の中で唯一私が心を許せる相手だ。

｢ただ、僕も父さんに反発するのには準備や度胸が居る。一つ、条件を出していいかい？｣

『…勿論。私は、彼と一緒にいられるのなら何でもします』

｢A、男を孕め｣

『……は…？』

｢その彼氏との子でもいい。その子供を利用して僕は天羽家を乗っ取る。協力……してくれるよな｣

嘘……嘘だ。お兄様はそんな事言わない。そんな話は持ちかける筈ない。

『お、お兄様。何かの冗談でしょう…？』

｢？冗談じゃないさ。もうそろそろ頃合だと思っていてね。Aがこんな話をしてきてくれてラッキーだったよ｣

『お兄様は、私の事、大切にしてくれてるんじゃ……』

｢大切にしてるさ。Aの事は、
大切な道具だと思っているよ。｣

お兄様への信頼が音を立てて崩れていくのが判る。

そうか、そうだよな。トンビから鷹は生まれない。瓜の蔓に茄子はならない。塵の子は所詮、

塵だ。

やっぱりこの一族は腐っていた。

女を道具だとしか思わない男尊女卑精神の権化。

男が社会を回していないと気が済まない昭和の遺物。

なんておぞましい生き物……

『判りました。この話はこれで終わりにしましょう。他言無用です、お兄様』

本当に時間の無駄だった。こんな所に来なければ、ずっと優しいお兄様のままだったのに。

直談判だ。お父様に、直接会って話をする。

『東雲、車を本邸へ向かわせなさい』

｢かしこまりました｣

優は、この事を聞いたら心配するかな。

私がこんな一族の出だと知ったら、幻滅するかな。

どっちにしろ、嫌だなぁ。

｢……A様｣

背中を優しく撫でる東雲の手。

『怖くなんか、ないわよ…』

そう言う私の手がワンピースの裾を握って震えているのを、東雲は見つけたのかもしれない。