“元”不登校様は告らせたい【不登校ネタ】 (ページ13)

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五十九話ページ13

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結局あの後は忙しく、石上とは業務的な連絡以外では喋らないまま一日目を終えた。

『石上、休憩入って良いわよ』

｢えっ、あぁ、うん。天羽、その、一緒に……｣

『嘘、スピーカーケーブルが接続出来ない！？そんな筈は……あぁ石上、何か言った？』

｢…いや、忙しそうならいい。至急の用事って訳でもないし｣

『そう……あれっなんで！？ちゃんと繋げた筈なのに……！』

｢……A様、さっきの文化祭デートのお誘い断ってよかったんですか？｣

『…デート？デートってあれよね？
巷で男女が交流を深める為にイチャイチャしながら出店を回る……』

｢はい、そのデートです。会計クン、今めちゃめちゃA様の事デートに誘ってましたよ｣

『……あぁあ…ぁぁあ！ぁぁぁああああ！！！やってしまったわ！！
絶好のチャンスだったのに！！』

｢うわぁーやっちゃいましたね……どうするんですか、文化祭終了まで後半日もないんですよ｣

『今考えてるわよ！』

とにかく、休憩中なんとしてでも石上を探し出さないと……

文化祭終了を祝いながらキャンプファイヤーを横目に告白する計画が台無しじゃない！

だって今日以外に告るタイミングないし……！

『ああもうっ、石上はどこな訳！？ねぇ、貴方！貴方、名前なんて言うんだっけ！？』

｢！！……東雲、です。東雲、とわ｣

『あぁそう！なら東雲、今すぐ石上を探しなさい！これはどの命令よりも重要よ！』

｢……はは、やっと…やっと名前で呼んでくださいましたね。
御意。今すぐ会計クンを探し出します。全ては、A様の思うままに｣

……何か、吹っ切れたような色だった。気持ちの良い蒼色。

でもそんな物に構っている暇はない。今は石上の事が最優先事項だ。

『一体どこなの…！？』

視界の端に、見慣れた紺色の髪が映る。

あっ。見つけた。

『石が……』

｢これは僕の気持ちです｣

そう言って、石上はハートのクッキーを子安先輩に渡した。

嘘だ。嘘だ嘘だ。嘘だと思いたい。見間違いだと思いたい。

でも見間違える訳がなかった。

私の眼は、しっかりそこに、好きな人の姿を捉えていた。

｢あちゃー、石上くんやっちゃいましたね……てあれ！？Aちゃん！？あわわわ！！！
Aちゃん、今すぐ離れ……て…Aちゃん！？大丈夫ですか、Aちゃん！？｣

ぐらりと歪む視界の中で、最後に見えたのは焦って駆け寄ってくる藤原先輩の姿だった。