☆うんざりな私 ページ42
｢お願い甲斐さん、今回だけなの！どうかまたうちの部に｣
｢絶対嫌です。お話はそれだけですか？さようなら｣
！石上……！どうしよう、私今凄く面倒臭い人に絡まれてるのよね……
話しかけたいけれど……
｢何してるの？｣
話しかけてくれたぁっ！
嬉しいっ、石上が学校で私に話しかけてくれるなんて！
今日は良い日ね、とっても良い日！
｢吹奏楽のアンサンブルコンテストへの出場を頼まれてるのよ。パーリーの先輩が腕やってダウンしちゃったみたいで、顧問直々に"元"秀知院吹奏楽エースの私に頼みに来たらしいわ｣
｢へぇ……先生、甲斐が嫌がってるならやめませんか？代役なら他にも｣
｢居ないの！今年が勝負なのよ、うちの学校に貴方以上のトランペッターは居ない！｣
だから、私はもうトランペット所か音楽の道すらやめたんだってば。
私に音楽の才能は無い。
それが身に染みて分かってるから私はやめたんだ。
｢貴方の突き抜けるような高音は誰にも真似出来ない！お願い、コンクールだけでも戻ってきて！｣
｢あの、先生……甲斐は嫌がってるんですから｣
｢石上くん、貴方は黙ってて！！貴方は音楽の事なんて何も分からないでしょう、甲斐さんの音を聴いた事も無いでしょう！貴方に甲斐さんのトランペットの価値は分からない｣
ああ、教師という尊敬するべき人の声の筈が、私の耳には雑音にしか聞こえない。
私の石上になんて口利いてんのよ、このクソ
｢ねっ甲斐さん、うちの部には今年しか無いの！お願いだから｣
｢うるっさいな！！もう音楽はやめたの！！先生だって聞いてるでしょ、私はもうトランペットを吹いてない！！私の音の価値なんて、私にだって分からないわ！先生にだって分かる筈ない！！｣
｢私はもう音楽を楽しめないの！もう中学の頃みたいな音は出ない、出せない！！アンコンとか知りませんっ、私はもう吹奏楽を辞めましたから！
……分かったら、石上から離れてください。
石上、行こ｣
学園の敷地を出鱈目にずんずん歩く。
もう勧誘の話は聞きたくない、私は音楽の道を降りた。
もう、楽器はやらない。
｢……なあ、甲斐……えっと、答えたくなかったら答えなくて良いんだけど……
お前も、中学の時に何かあったのか？｣
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2022年5月24日 21時
