☆励ます私 ページ38
｢石上｣
｢……学校で話しかけてくるなんて珍しいな｣
｢うん、ここなら誰にも見られないし、今日だけは……今、直接貴方に言いたくて。
石上……頑張ってね。私は、石上の事……応援してるから｣
｢ははは、俺が演説する訳じゃないのに？それは会長に言ってやれよ。
ありがと、頑張るよ。甲斐に応援された以上、伊井野を完膚無きまでに叩き潰して絶対勝つから｣
｢うんっ。伊井野に、負けないで｣
｢負けないよ。伊井野に言いたい事を全部言って貰った上で、完璧な勝ち方をする｣
石上の表情はどこか清々しくて、ああ、私はきっとこうはなれない。
石上みたいに全部振り切って、自分の信念の為だけに生きるなんて……絶対出来ない。
良いな。
石上が羨ましい。
｢わっ莫迦っ、何するんだ！人が見てたらどうするつもりで｣
何って、ただのキスじゃん。
もう何十回としてるのに、何を今更焦ってるの。
やっぱり石上は童貞なのね、可愛い。
｢勝負強くなるおまじない。行ってらっしゃい、石上。私は公平に判断して投票するわ｣
｢だろうと思ってる｣
ひらっと手を振って、私たちは別れた。
｢ねぇ、白銀会長の隣見て｣
｢うわ、石上｣
｢マジでなんで登校出来てるのあいつ｣
｢無理無理、きもいきもい｣
｢また生徒会役員やるつもり？｣
｢うわー、無いわ｣
｢あれだけの事しといて何も無しとか流石に酷い｣
石上への罵詈雑言……一年の校舎では、聞こえてこない日の方が珍しい位有り触れている。
有り触れている、けれど。それに納得してるとは言ってない。
だって石上は。石上は、あんなに優しくて面白くて、たまに、私にこれ以上無い位甘い一言を放ったりして。
あんたたちに石上の一体何が分かるのよ！と触れて回りたい所だけど、それは辞めておこう。
私の中の少しの独占欲が、それを許さないから。
最低だ、私。石上が嫌われてる事、内心で安心してる。盗られる心配ないからって、このまま嫌われてくれればとか思っちゃってる。
つくづく自分が嫌になる。
保身にばかり走って、石上の胸中なんて微塵も思いやった事が無くて。
けれどまあ、私が心の中で何を思っても石上は私に変わらず微笑みかけてくれるから。
もう少しだけ、石上の優しさに図々しく甘えてみようと思うのだ。
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2022年5月24日 21時
