☆バースデイな私 ページ36
｢あ、あのね石上っ、今日なんだけれど｣
｢あー、ごめん。今日選挙の事で仕事あるから、予備校行けそうにねーわ。本番二日前で時間無いんだよ、ごめん｣
｢……そう｣
お泊まり会から数週間。生徒会は解散し、石上は生徒会会計を辞任して一般生徒に戻った。
ただ、白銀会長がもう一度立候補してたから、恐らくまたやるんだろうけど。
今日も選挙活動で私より生徒会を優先した。
今日、私の誕生日なんだけどな……
石上は休み時間もずっと選挙のPVとか作ってたみたいだし、私からも言ってないし……そりゃ知らないわよね。
石上からしたら今日は平日で、きっと私の誕生日だなんて夢にも思ってなくて……
でも、誕生日よ？たった一度の、十六歳の誕生日。
選挙活動が大事なのは分かってる。十分分かってるし、それより私を優先しろなんて言うつもりは無い。
けれど、今日位。一年に一度の大切な日位は、私に……
｢石上っ｣
｢だから今日は｣
｢ちが、ちがう……違わないけどっ、今日私……誕生日なのっ、私、今日十六歳になったの！だからその、今日は……今日位は、私の事｣
上手く言葉に出来ない。正直に全部言ったら、呆れられる気がしてならない。
わがままな女だって思われそうで怖い。
それでも、私は今日位石上と二人で───────
｢えっ、そうだったの？うわぁーマジか、何も用意出来てないよ。そっかー、今日甲斐は誕生日なのか……じゃあ仕方ねーな、うん……今日は先輩に言って休ませて貰うよ｣
｢え、でも石上忙しいんじゃ｣
｢はは、引き止めたのどっちだよ。良いよ。誕生日なんだろ？今日位わがまま言ってくれて良いよ｣
石上……！素敵っ、なんて優しいの……！
｢誕生日おめでとう、甲斐｣
｢ありがとう、石上。石上の誕生日はいつ？祝わせてよ｣
｢三月三日のひな祭りだよ。今日は人の事気にしてないで自分だけ優先してろ｣
｢うん……｣
ああ、つくづく思う。この人を好きになって良かった。石上に惚れて良かった。
自分の事で手一杯なくせに、いつでも人の事ばかり気にかけて。
無理しないで欲しいのに、自分だけ見て欲しいというわがままな欲望ばかりが胸に積もる。
優しいのに意地悪で、私が欲しい言葉を欲しい時にくれて。
独占欲、支配欲……好き以外の感情が私を取り巻く。
好き、大好き。愛してる。
いつか伝えられたら良いな。
｢石上っ、行こっ｣
｢わっバカ、そんなくっつくな｣
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2022年5月24日 21時
