☆憂うあいつ ページ16
｢石上！今日は早いのね｣
机に荷物を置きながら言う。
いつも私が早く来て、後から石上が来てお喋りするから、こうやって話しながら勉強道具を用意するのはなんだか新鮮だ。
｢生徒会が解散したからな、仕事が無くなったから予備校に来て勉強する時間が増えた。
……まあ、どうせあの人の事だからまた立候補するんだろうけど｣
｢でも、もう立候補するメリット無くない？推薦状はゲットしてる訳でしょ？生徒会長は激務だって聞くし、そんな役職二年続けてやろうなんてあの先輩でも流石に思わないんじゃ｣
｢……白銀先輩が生徒会長に立候補する理由は、別に生徒会特権の為だけじゃないよ。あーあ、惚れた女の為に戦うナイトね、男なら一度はやってみたいもんだね｣
｢……？石上が言ってる事の意味はよく分からないけれど、女の子もナイトに護られるプリンセス、一度はやってみたいよ？｣
……でも、あの生徒会室基本解放されてるから、前みたいに悩み相談に行けなくなるのは少し寂しいかも。
｢石上、学校での居場所無くなっちゃうんじゃない？こんな事言ったらアレだけど、まだ私以外の同級生には大分疎まれてるし｣
｢まあな。そりゃ、怖いよ。今まで見えてなかった悪意が目に見えて自分を突くだろうって言うのが分かりきってるからな。ただ、怖くても戦える奴に俺もなりたい。いつまでも逃げてられないから｣
石上……意外と根性あるのね、見直したわ。
｢どうせ白銀先輩が立候補したらまた選挙して当選して、俺もまた会計職になるんだろうから、少しの辛抱だよ｣
｢選挙と言えば、毎年立候補してるのが居るわよね。初等部の頃から、ずっと｣
｢……伊井野の事か？｣
そう、伊井野ミコ。
時々風紀の乱れとか言われて、服装の規定を本来より厳しく取り締まるから私のグループ周りにはちょっと疎まれてるんだよね。
｢いくら甲斐でも伊井野を莫迦にするのは許さないからな。頑張ってる奴が笑われるのはイラつく｣
｢……まあ、伊井野に良い噂は聞かないけど、私はデマを広めた事無いよ。噂なんて当てにならないって、石上見て一番感じてる事だから、それ｣
石上がこんなに正義感強い人だって、こうして喋らなかったら絶対気づく事無かっただろうし。
まだまだ石上の謎は深まるばかりだ、中等部の頃の事の真相も気になる。
きっと私の考えるよりずっと闇の深い真相だから、いつか私に心を開いてくれるまで、私は待つしかないのだけど。
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2022年5月24日 21時
