☆夏祭りな私たち ページ1
｢お兄さんっ、どうしましょう！浴衣、無くなってたと思って新しいの買っちゃったけど、クローゼットの奥にあったんです！どうしよう、どっちで行くのが良いかしら！？新しいのも可愛い色をしてますけれど、前から持ってる方も素敵な柄なんです！｣
深い紺の浴衣に金薔薇の刺繍と、白の浴衣に桜の刺繍……どうしよう、どっちも可愛い！
｢うーん……いつも黒い制服を着てるんだから、白い浴衣で行ったほうが良いんじゃないか？僕的には見慣れない色の服の方が下着への興味をそそられるね、脱がしてみたくなる｣
｢やだお兄さん、妹に向かって何言ってるんですか｣
石上もそういう事思ったりするんだろうか……いいえ、こんな事考えるのは野暮ってやつね。
｢じゃあ白にしますっ｣
浴衣の着付けは祖母から散々教え込まれている、自分で着る位おちゃのこさいさいだ。
可愛い簪で兄が髪を結ってくれたし、メイクも完璧。
ただ私が知りたいのは、着付けが間違っているかどうかとか、そういうネットでも出てくるような事では無く。
(石上、可愛いって思ってくれるかな……！？)
姿見の前で一周して、いくら"可愛いよ私、自信もって！"と自分を励ましても自信がつかない。
うずうずして、早く反応を見たくなって。
三十分前にも関わらず、私は家を飛び出していた。
｢……でも流石に早く着きすぎたよねぇー……｣
ずっと待ってたら、なんか待ちぼうけしてるみたいで……嫌だな、変な想像しちゃった。
"早く時間よ過ぎて"なんて、久しぶりに思った。
ふと、覚えのある爽やかな香りが鼻を掠める。
｢あ、石上！早いね、私も大分早く来てたつもりだったけれど｣
やったやった、予定より二十分も早く石上と会えたじゃない！予定より二十分も長く居られる！
甚平似合ってるわ、輪郭細いなぁ、脚も長いし……格好良い……
私ったら、男の人を格好良いだなんて思ったの、お兄さん以外では初めて……
｢甲斐さん……一瞬誰か分からなかったよ｣
｢やだあ、あんまり変わらないでしょう｣
｢本当に分からなかった。その……凄く、綺麗だから｣
"きれい"
きれい、きれい、キレイ……
綺麗！？
石上が！！私に！！直接！？綺麗！？綺麗って！！
凄いわ浴衣パワー、こんな簡単にあの石上から綺麗なんて三文字を引き出せるなんて！！
｢甚平似合ってるよ、格好良い｣
｢……ありがと｣
可愛い……
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2022年5月24日 21時
