203話 ページ16
｢それでね、Aさん……｣
｢ごめぇーん！もうそろそろ私次の予定が押してて……ごめんねっ｣
｢い、いや！大丈夫、大丈夫！｣
あんまり優くん以外の男の人と喋ったら優くんに怒られちゃう……
見つからないうちに、会話辞めないと……
｢A。今の男、誰。｣
───────あ。
しまった、見つかった。
優くんにだけは、見つかりたくなかったのに。
優くんの事しか見えない、清純で可愛い女の子で居たかったのに。
他の男の人と居てる所、見て欲しくなかったのに。
｢た、ただのクラスメイト。一年の頃のだから優くん知らないよね！なんでもないから、本当に……大丈夫！
私が好きなのは優くんだけだから、安心して。｣
｢いや、いやいや。アイツ明らかにAの事好きじゃん。僕のだって言ってんのに、明らかに狙ってんじゃん。
そんなのも気付かないの？鈍感すぎ。｣
｢ゆ、優くん……もしアレだったら今日おうち行くよ？あっ、ラブホ挑戦してみる？あっちに人来ない教室とかも…｣
｢あのさぁ。Aは僕をなんだと思ってるの？そうやって誘惑してれば着いてくようなチョロい男だとでも？
僕、そんなに単純じゃないんだけど。ねぇ、答えなよ。言い訳の一つでもしたらどう？
Aのそういう甘い認識、不愉快。｣
やってしまった。やらかした。
優くんの機嫌を損ねた。怖い。いつも優しいのに、優くんが怖い。
喋り方はいつもと同じ。でも、威圧が半端ない。怒ってる、完全に。
嫌われたくない。優くんに嫌われたら、私生きていける自信無い。
身体を支えてられなくて、私は崩れ落ちて優くんに許しを乞うていた。
｢や、謝る…から……私の事、嫌いになんないで……お仕置でもいいから…痛いのでも受け入れるから……
殴っても、踏んでもいいから……だから、お願い…嫌わないで……一人にしないで……怖い、怖いから……｣
ボロボロと涙が零れ落ちて、視界を歪ませていく。
優くんが居なくなっちゃう。私の前から消えちゃう。
｢A。｣
｢っ優く……｣
｢嫌わないから。嫌う筈ないから。ちょっとイラッときちゃっただけだから。
Aが僕の知らない所で、知らない男と関わるのが、どうしようもなく怖くて……ごめん。
もう、絶対泣かせないから。｣
ぎゅうっと抱きしめられて、さっきとは違う涙が溢れ出る。
｢っ絶対、絶対私の事離さないで…！｣
｢うん、離さないよ。｣
｢絶対、絶対だからね！｣
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作者名：白米 | 作者ホームページ：http://http://uranai.nosv.org/u.php/hp/13ec41960d1/
作成日時：2021年8月19日 17時
