末澤先輩。 (ページ10)

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A「お待たせしました」

そう言って部屋に入ると楽譜を見てる先輩。

A「ほんまに音楽好きなんですね」

誠「めっちゃ好き。歌うのも好きやしステージに立つのも好き。あいつらとやるのも好き」

A「羨ましいです。
私今までこれが好きってものがなかったので」

誠「そしたらこれから見つけていけるやん。
ほら、軽音部に入ったんやし！」

A「まだ入ったばかりやけど楽しいです。優しい先輩方いっぱい居るし」

誠「俺が卒業したら、あのグループにAちゃんと梨沙ちゃんが入ってくれるとええなあ」

A「えっそんな荷が重い！！」

あははと笑う先輩。

A「そういえば末澤先…」

と言いかけた時、

誠「いつまで苗字呼びなん？」

A「え、いつ、まで？」

またさっきみたいに手を握られた。

誠「誠也って呼んで」

A「へ…」

誠「ほら、誠也くん」

顔が近い。近い。近い。

A「せ、誠也くん…」

誠「よく出来ました」

そう言った瞬間、唇に温かいものが触れた。

それが先輩の唇だと理解する頃にはもう遅くて、
先輩は布団に倒れていた。

「ただいまー」

と声が聞こえて帰る準備をして慌てて部屋から出た。

A「お、お邪魔しました！！」

「え、ちょっと！」

きっとお母さん。
そんな声は聞こえないくらい全力で走った。