男の娘審神者の受難。【其ノ二】 (ページ9)

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デジャヴページ9

俺、乱、膝丸の3人で大広間を出て、皆帯刀してから、周囲を警戒しつつ玄関の方へ向かっていく。
道中、何も変わったことは無かったが、玄関に近づくにつれて、嫌な空気が濃くなっていっているのは、感覚的にわかった。

丁度玄関の手前、玄関から見ると陰になって見えない所に、一先ず俺たちは身を潜め、先頭を歩いていた俺が、まずは様子を窺ってみる。

人影が見えるのは玄関先だが、玄関の扉が開いているのでここからでもなんとか様子が見られるようになっていた。
一番奥には見覚えのない男、その前には審神者が立っていて、その審神者の斜め後ろで、何故か髭切がしゃがみこんでいた。
が、その髭切がこの嫌な気配の出処だと分かる。妙な術を使われているのは明らかだった。

「……髭切に妙な術が使われている」

声を潜めて、後ろにいる乱と膝丸に報告すると、二人とも瞳を揺らがせる。
特に膝丸の動揺は大きいようだったが、今下手に出ていくのが得策で無いのは理解しているらしく、この場から飛び出していくことはなかった。

「兄者の様子はどうだ？」

「しゃがみこんでいるが、極度に消耗しているようには見えない。多分、動きを封じるぐらいの術なんじゃないか？」

「人間の様子は？」

「二人で話している。内容は分からない……、けど」

距離がそこそこ離れているため、声自体は聞き取れないことはないのだが、何を話しているかは聞き取れない。
けれど、消してしまいたいほど、忌忌しい記憶が頭をよぎると同時に、黒い装束に身を包んだ中年の男から、確かに感じた。

「……前の審神者を見ているみたいだ」

ぽつり。呟くようにその言葉を吐けば、二人の顔が少し強ばったのを感じた。

「……それは、どっちの人間？」

探るような乱の声が、控えめに飛んでくる。

「見覚えのない方だ」

そう告げれば、二人とも今しがたこの本丸に来た人間だと理解したようで、表情が険しくなった。

さて、ここからどうする。
見覚えのない男が使っている術がどういうものなのか詳しく分からない以上、下手に動くのは得策ではない。
それに先程、髭切が見覚えのない男の後に回り、首筋に当てたが男の表情に焦燥はない。
人を殺したり傷付けたりする命令をしないと確信しているからか、それともまだ何か手を持っているからか。いずれにしても、警戒するに越したことはないだろう。