男の娘審神者の受難。【其ノ二】 (ページ8)

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半信半疑2 ページ8

乱と話をした後、二人で大広間に戻ると、人間がここに来た人間に応じるため、髭切と玄関に向った、という情報が飛び交っていた。

「全く、兄者は一体何を考えているのだ……っ」

髭切の弟である膝丸の顔には、焦燥と心配がうかんでいた。
膝丸は気を失っていたおかげで、昨日の人間の言動をほぼ、というか、全く見ていない。
つまり、膝丸の視点だと、新しく人間が来た次の日に、恨んでいる人間を信頼すると突然兄が言い出したことになる。
膝丸とて、自分や仲間たちを手入れしてくれた恩は感じているのだろうが、彼もまた兄弟を失った刀だ、それだけでは信頼には至らないだろう。
他の刀にしても、困惑している者が殆どで。俺たちのように間で揺れている者は少数のようだった。

微妙な空気が流れ続ける大広間。その空気が揺れたのは、突然だった。

「っ！？」

俺だけではなく、他の刀剣達も、空気が変わったのを感じたらしく、顔を上げて何があったのかと周りを見渡す。
大広間には、なんの変化もなかった。そもそも、この変な空気の出どころは、大広間ではないようで、感覚を良く澄ましてみると、それは玄関の方から来ているのだと分かる。

「……様子を見てくる」

最初に立ち上がったのは膝丸。兄である髭切が人間に同行している以上、彼が最初にそう言い出すのは予想がついた。

「待って。じゃあ僕も行く」

膝丸が足を動かし始めたところで、乱が膝丸の服の袖をそっと掴んで、その歩みを止めた。

「様子を見てくるだけだ、そう何振も要らないだろう？」

「もし敵がいて戦闘になったら、その時野外での戦闘ならいいけど、もし相手が室内戦に持ち込んできたら、膝丸さんは練度は高い方だけど不利でしょ？だから、短刀の中で一番練度が高い僕がついて行くのは妥当かなって」

膝丸の返事を待たず、乱は続ける。

「けど、短刀の中では一番練度が高いって言っても、僕の練度じゃ不安がある。だから──」

そこで、乱は俺を見やる。

「野外戦でも室内戦でも戦える打刀で、その中で練度が高い切国さんも一緒に行った方がいいんじゃないかな」

正直、俺に同行を頼むのは読めていたが、別にそれを拒む理由もない。
俺は言葉を口にすることなく、1つ承認の意味を込めて頷いた。

「そこ迄考えていなかった。……すまない、冷静さを欠いてしまっていたな」

申し訳なさそうに頬を掻く膝丸に、乱は気にしなくていいよ、と笑った。

「きっと、僕が膝丸さんの立場でも、そうなってたから」