男の娘審神者の受難。【其ノ二】 (ページ43)

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詰問ページ43

光藤さんと乱藤四郎様が応接室から出てきたのは、1時間と少し経ってからだった。
部屋から出てきた彼に、特に疲れた様子や沈んだ様子がないことに、ひとまず安堵した。

というのも、高官にはあまり良い印象がない。

有能な人間が多いというのは確かなようだが、部下の扱いが雑だとか、やり方が性急にすぎるだとか、そんな話を噂程度ではあるもののよく聞く。
そもそも、本来審神者経験の無い人間は、ブラック本丸に送られることが無いのに、光藤さんが送られたのだって、経験がなくても才能があるから、と、近年時の政府の実権を握っている桜亭家の関係者が、GOサインを出したかららしい。

しかし、本来ありえないこととはいえ、こうして光藤さんが本丸の立て直しを進めているあたり、やはり高官の人を見る才能は確かなのだな、とも思う。

「 ……あれ、1人なんだ？」

「はい、川原さんは急遽仕事が入ってしまいましたので」

「ふぅん」

あまり興味なさげに返答する光藤さん。
川原さんは、担当する本丸の審神者に呼び出され、今は不在だ。
……とはいえ、今回の件は私が担当する本丸で起きた問題だ。これ以上、川原さんに頼る訳には行かない。

「では、ゲートのあるお部屋まで案内致しますね」

私はそう言うと、元来た道の方をむく。それに光藤さんとと乱様がついてくる気配を感じると、歩を進み始めた。

テレポーターに乗り、降りた先の、同じ小部屋が続く長い廊下を歩く。その間、会話は一切なかった。
そして、"備前国第56本丸"と書かれたプレートの扉の中に入る。

「 ……ねぇ」

小部屋に入って、あとは本丸へ続くゲートを通るだけ、となった時、光藤さんが私を呼び止める。

「はい、如何致しましたか？光藤さん」

「本当は探るつもりなんか無かったんだけどさ、……"縁"のこと、どうして僕に教えなかったの？」

光藤さんの口調も表情もいつも通りなのだけれど、じっとこちらを見据える彼に静かな圧力を感じて、思わず黙ってしまう。

「そこで黙るってことは、やっぱりただ忘れてたんじゃないんだ」

「 ……やっぱり、とは？」

「ただの勘。それに僕、余計な事まで色々考えちゃう質(たち)だから」

"縁"という重要なシステムを教えることを、ただ忘れていただけじゃない。……図星だ。

「でも、ただ僕を嵌めるだけにしては妙に違和感がある。──だから、真実を教えて欲しい」