男の娘審神者の受難。【其ノ二】 (ページ36)

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第54話ページ36

審神者が刀剣男士に殺されるのは、レアケース中のレアケースだということは、それを阻止する為、何らかのシステムが設置されている可能性が高い。
そして、おそらくそれなんじゃないか、というワードを今まで何度か聞いた。

「 ……それってその、さっきから言ってる"縁"って奴のせい？」

「！」

僕がそう尋ねると、皇さんは驚いたように少し目を見開いた。まるで、それすら知らず審神者になったのか、というような顔である。

「え、Aさん、"縁"の存在も知らずに本丸に来てたの……？」

隣に座っている乱も驚いたように、僕の顔を覗き込んでいる。

「いや、だって本当に必要最低限のことしか言われずに本丸に行ったし」

「え、えっと……、"縁"のことは本来必要最低限のうちの項目に入るはずなのですが…… 」

皇さん、乱、僕と3人とも大困惑である。
そして、さらにそこへ皇さんが爆弾を投下する。

「そもそも、いくら才能があるとは言えど、本来審神者の経験がない者をいきなりブラック本丸に送るなんてこと、普通はありえないことなのですし…… 」

皇さんは険しい顔をしているけれど、ちょっとさっきから情報量が多くて追いつかない。つまり、真にブラックなのは本丸でなく政府だと。
まあ拒否権を与えられなかった時点で、何となくわかっていたことではあるけれど。

気になることは多いけど、取り敢えずはその"縁"とやらだ。

「 ……ごめん、ちょっと頭追いつかないから、先に"縁"についてを教えて貰える？」

「あ、はい。ごめんなさい、余計なことを言ってしまって」

皇さんは申し訳なさそうに僕に謝れば、すぐ"縁"のことについて教えてくれた。

"縁"とはすなわち、審神者への殺傷防止、そして滅多には起こらないが、神隠しを防止するために敷かれているシステムらしい。
"縁"は、審神者から刀剣男士へ一方的に結び付けられているものであり、これがある限り、刀剣男士は自身の主である審神者へ危害を加えることも、神隠しをすることも出来ないという。

"縁"を結ぶ方法は2つ。

1つは、審神者の霊力で刀剣男士を顕現させること。
そしてもう1つは、刀剣男士が審神者のことを"自らの主"だと認めること。

この2つのうち、どちらか一方が当てはまれば"縁"は結ばれるらしい。
つまり、乱、髭切、山姥切の3振りは後者に当てはまるというわけだ。