男の娘審神者の受難。【其ノ二】 (ページ34)

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第52話ページ34

しかし、就任早々、こんなことが起きてしまった。確かに詳しくなくとも審神者は務まるのだろうが、知識を入れて置いて損は無いのかもしれない。

「どういう術なの？それは」

「端的に言えば、他人の霊力を一時的に自分の支配下に置く術です。ただ動きを止めるだけの術なら、審神者と"縁"を結んでいる刀剣男士様の動きを止めることはできませんからね」

2205年の技術だったり、こういうオカルト的なことだったりということに耐性は出来てきた筈だけど、こういう話をされていると頭がついて行かないあたり、やっぱりこの世界に順応しきれてないな、と改めて思う。
とはいえ、ことが起きてしまった今、意地でもついて行かせるしかない。

一先ず、今わかったことは、ただ動きを止めるだけの術では、縁とやらを結んでいる刀剣男士の動きを止めることは出来ないが、審神者の霊力を一時的に支配下に置くことで、それを可能にする、といったところか。
仕組みは一切わからないけど、取り敢えずそこだけは理解した。

「 ……なるほど。で、その術が処罰が重くなることにどう関係してるの？」

「わたくし達は、個々の霊力を、生命と同じく、決して犯してはならないものと定めております。他人の霊力を支配下に置く事など、余程の事情が無い限りは禁じられているのです」

霊力とは、万人が生まれた時から持つ力で、量も質も各々で違い、様々な個性を持つ、とは役人さんこと佐伯さんから聞かされた話だが、それをひとつの命と同じ扱いをしている、ということは、その霊力自体が、人間の生命活動に大きく影響するものなのだろうか。

「 ……ねぇ、その術って、Aさんが倒れた事も、関係あるの？」

頭の中で色々考えていたら、ずっと黙っていた乱が皇さんに問う。
皇さんは顎に指を当てて少し考えると、直ぐに結論が出たのか乱の方を見る。

「 ……そうですね、通常、人の霊力は他人の支配を受けた時、それに対する拒絶反応を起こします。それによって体調に支障をきたすことは稀ですが、強い疲労感を感じるという報告はありますから、決して関係ないとは言いきれません」

そっかぁ、と返事をする乱を横に、また少し考える。
概ねの予想通り、霊力は人間の生命活動にも影響するものらしい。しかし、個人差の振り幅が広いせいで、一概には言いきれない部分が多いと言ったところだろうか。