男の娘審神者の受難。【其ノ二】 (ページ33)

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第51話ページ33

「 ……仁瀬はそれなりに有名な家の出だと聞いたけど、それで、おそらく政府の高官であろう君が出てくるのは大袈裟じゃないの？」

僕の言葉を聞くと、皇さんは「いいえ」と首を横に振った。

「今回のことは、普段の仁瀬の振る舞いを知りながら、彼に処罰を与えなかったわたくし達に非があるのです」

「普段の行いを知ってたのなら、もっと早く対応も出来たんじゃない？……まあでも、何か理由があるんだろうけどさ」

「仰る通りです。……わたくしは、ただ名門皇家の嫡女という理由だけで、今の立場に置かれました。故に、副局長などという立場に置かれては居るものの、立場に見合う権限を、ほぼ局長から与えられておりませんので」

皇さんは、さらに表情を曇らせて続けた。

「今回の件も、局長に何度も進言していたのです。署名も集めたのですが、全て聞き流されてしまっていて…… 」

ひとつ分かったのは、その曇った表情や声音からして、この人は嘘をついていないということ。
聞く限りでは、彼女は難しい立場にいるようだが、やれる事はやっていてくれたらしい。

「ですが、今回刀傷沙汰になったおかげで、周囲の証言、本人による自供まで取れましたので、局長もやっと動いてくれましたし、相応の処罰は与えられるかと。……しかし、やはり相手方からもお話を伺いたいと思いまして」

それで僕を呼んだ、ということか。

今彼女のことを100パーセント信頼するということは出来ないが、これで嘘を話したとしても何も変わらない。
なので、僕は仁瀬と何があったのか、僕が気を失っていた間の出来事は乱に補足してもらいながら、洗いざらい話してやった。

そうして話し終わった時、皇さんを見ると、顎に手を当てて考えていた。

「 ……そう、ですか。やはり、彼の処罰はもっと重いものになるでしょう」

「 ……どういうこと？」

「仁瀬があなたと髭切様にかけた術のことです。あの場に駆けつけた役人の1人からも聞いていたのですが、あなたの証言で確信が持てました。……それは、ただ動きを止めるだけの術ではないでしょうね」

僕はそういう術だったり霊力だったりということには疎い。
なんならついこの間、佐伯さんから霊力とは何か、を教えて貰ったばかりだし、霊力に感じて詳しくなくとも審神者の仕事はできると聞いたので、本丸の建て直しで手一杯の現状、あまり詳しく知るつもりも無かったのだ。