男の娘審神者の受難。【其ノ二】 (ページ32)

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第50話ページ32

テレポーターから出て、歩き始めてすぐの所にある大きなドアの前で2人は止まった。
ドアには所々に細かい模様が彫られていて、この奥にお偉いさんが居ますよと言わんばかりの雰囲気を漂わせていた。

そのドアを、佐伯さんが3回ノックする。

「皇(すめらぎ)様、連れて参りました」

『どうぞ。お入りください』

中から返ってきた声は、優しげな女性の声だった。声質からして、若い女性だろう。
その返事をしっかり聞くと、佐伯さんがドアを開けてくれる。

「私共はこのお部屋の前でお待ちしておりますので」

どうやら、佐伯さんと内原さんの2人は、ドアの中には入らないらしい。
僕とこの中にいるお偉いさんとで話をしろってことか。

「分かった。……行こうか、乱」

「うん」

乱に視線を向ければ、乱は笑顔で返事をしてくれた。
その返事を確認すると、ドアの中へ入る。

ドアを抜けるとまず、少し離れた正面の壁際に、高そうな額縁に入れられた風景画が飾られている。
視線を部屋の奥の方へ移せば、これまた高そうなテーブルクロスが敷かれた正方形の黒い大きな机と、座り心地の良さそうなソファがそれを取り囲むように設置されていた。

そして、そのソファに座る人物が1人。

「お待ちしておりました。光藤Aさん、乱藤四郎様。どうぞ、そちらにお掛けください」

そこに居たのは、優しげな声音を裏切らない、優しげな雰囲気を持った女性。
年は20代前半くらいだろうか。

「 ……どうも」

一先ず言われたとおり、ソファに腰かける。……うん、凄く座り心地の良いソファだ。

「本日は態々来て下さりありがとうございます。わたくしは、時の政府人事局副局長・皇鈴蘭(すめらぎすずらん)と申します」

一礼をし、皇鈴蘭と名乗った彼女は、名刺を僕に渡してくる。
ここまでは非常に謙虚な態度で話しているけれども、先程様付けされていた辺り、彼女は時の政府の高官なのだろう。

「まず、この度は、一族の者が大変な無礼を働きまして、大変申し訳ございませんでした。きっと、光藤さんにも、乱様にも、ほかの刀剣男士様方にも、大変不愉快な思いをさせてしまったことでしょう」

皇さんは眉を八の字に下げ、申し訳なさそうに、深く頭を下げてきた。
昨日、仁瀬はそれなりに有名な家の出だから、上の者がざわついている、と聞いていたけれど、この皇さんの家の系列なのだろうか。