男の娘審神者の受難。【其ノ二】 (ページ2)

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第31話ページ2

「あ、みーくん、ここに居たんだ」

役人さんとの電話を切り、どうせ部屋に戻ったのだから押入れの中もこの際把握しておこうと、押入れに潜り込むようにして物色していたら、不意に声をかけられた。
押入れから出て、声の主の方へ顔を向けてみれば、そこには部屋の入口から顔を覗かせる髭切が立っていた。

「あれ、髭切、どうしたの？」

髭切の顔は変わらぬ呑気な顔だが、何かこう、上手くは言えないけれど、少し困ったような、いや、焦ったような？雰囲気を感じる。

僕がそれを汲み取ったのを感じたのか、髭切は困ったように眉を曲げた。

「ええとね、玄関先に誰か来てるみたいなんだ」

「えっ」

思わずそんな声が出た。役人さんの話では、こちらに訪問するのは午後からじゃなかったか。

もしかして僕が気づかなかっただけで、もう午後になってた？
と思って携帯の時刻を確認してみるが、まだ午前中で、午後まではあと数時間ある。ついでに言うと、役人さんと電話をしてから、まだ30分も経っていない。
一体どういうことだと思いつつ、髭切に問いかける。

「どういう人が来たかわかる？」

「うーん……、僕が直接見た訳じゃ無いからなぁ。でも1人だけだって、……ええと、名前忘れちゃったけど、短刀の子が言ってたよ」

髭切がさり気にまた名前を忘れてしまっているが、この際それは置いておく。
それより問題は、玄関先に居るのは1人だけ、という点だ。訪問してくるのは役人さんとその上司の2人ではなかったか。

訪問してくる時間も、人数も、先程話した事とは違っている。
もしかしたら、政府の役人以外の人間だろうか。……いや、でも審神者が肩代わりして間も無い、まだちゃんと機能していない本丸に、部外者が何の用を持ち込むか、と考えるとその可能性は薄い。

となると、やはり役人か……？

「ねぇ、みーくん、さっきから色々考えてるみたいだけど、今日誰か来る予定でもあったの？」

流石髭切、鋭い。

「うん、まあね。……って言ってもついさっきの話だし、訪問の時間や人数が聞いた話と違うんだ」

「へぇ。……騙されてるんじゃない？」

「そう、なのかな」

その可能性を考えていない訳じゃない。ただ、役人さんが僕を騙したと仮定して、役人さんになんのメリットがあるのかがさっぱり分からない。
僕のわからない所でなにかメリットが発生する事があったとしても、この程度の嘘で済む事なのだろうか。となれば、なにかの布石だったり？