第7話 ページ10
夢主side
いつの日か、自身の脳内に声が聞こえてきた。私が精神操作の異能を使う度に聞こえる、あの声。
“君は異能力だけ強いけど、精神は弱いよね。”
ほら、またこれだ。私の事をどん底迄突き落とす、正に悪の囁きだ。
“人虎の彼は慥かに沢山の人を救った。凄いよね、元は臆病な子だったのに。____君は何も変わらない。”
『…………変わら、ない…か』
“四年前、君は織田作之助と太宰治を救いたいと云っていたね。実際、誰も死なずに君の望み通りに光の世界へと出た。”
何が、云いたいのだろうか。どうせ私が居なくても彼らは救われていたとか云って私の存在を否定するんだろ
______“本当に、光へ導く事が救いなのかな。”
『……え』
“だって、考えてみなよ。太宰治はあのままマフィアに居たら永遠に闇の中だよ。それはそうだね。けど、君がしたのは、只彼を苦しめるだけ。本当は判っているでしょ?”
此奴の云う通りだ。私は四年前の行動を果たして救いだと云えるのかな、織田さんさえ一緒に居れば、治にとって大切な友人なら、少しは孤独じゃ無くなるだろう…と。そうやって勝手に安心して、人任せにしていた。
“本当に、君は最低で最悪だよね。救いだと思ってした行動が、当人にとっては苦しめるだけで、その異能も残虐的で、性格も、だね。潔く諦めなよ。その自身の異能力でさ”
嗚呼、本当に……否定出来ないや。
太「…A?」
背後から治が顔を覗かせてきた。
太「なぁにそこで座り込んで居るのさ、仕事は無いのかい?」
今は、此奴と日常的な会話をする気力も無かった。
『なぁ、治。』
太「如何したんだい?」
『……人って、自分を救済する為に生きているんだって。…死ぬ間際にそれが判るみたいなんだ。』
『…死ねない私は、二度と救われない。___何で?私、死にたいんだ、死にたくて死にたくて仕方が無い…!それなのに……死ねない。』
私は立つ気力もなく、其の儘両手で顔を覆い嘆いた。
『……もう…二十一年も生きた。生きる意味も、生きる価値も…何も見いだせなくて、ただ暗闇の中を独りで彷徨う。……如何して?私、が…悪いの?』
こんな時でも涙は出なくて、私の瞳は濁ったまま。
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作者名:朱夜 x他1人 | 作成日時:2022年8月5日 16時