塗くんの助手。 (ページ40)

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あまりにも綺麗な写真だったから
思わず見とれてしまっていた。

塗「大丈夫？」

「あっ、ごめんね。
すごい綺麗な写真だなって思って。

これを本人にあげるべきかどうか、だよね？」

塗「そう。」

塗くんはそれに迷って、私を呼んだのだそう。

「私だったらまだあげないかな。

今日子さんの忘却が治るときがきたら
私はあげると思う。

きっとそのときなら、今日子さんも
厄介さんが良い人ってわかっているだろうし

今渡しても今日子さんは次の日に忘れちゃうから…」

塗「…そっか。ありがと。」

少しの沈黙が流れる。

その沈黙を破ったのは私で。

「…記憶が1日でリセットされるなんて
寂しくないのかな…今日子さん。

なんか切ないや。」

塗「今日子さんなら大丈夫。

1日1日を大切に過ごしているし
毎日を楽しく過ごすことができてるから。」

そっか、そうだよね。

初めて会ったときも、今日子さん本人が
同じようなこと言ってた。

切ないけど、それが今日子さんだもんね。

塗「ん、あとこれ。あげる。」

渡された1枚の写真。

そこに写っていたのは紛れもなく私の姿。

軽井沢観光で塗くんと写真を撮っていた時に、
いい写真が撮れて頬が緩んだ時の私が写っていた。

「これ、いつのまに？」

塗「…綺麗だから撮った。」

「へ！？」

塗くんから出た言葉に、思わず変な声が出る。

綺麗って……言った？

「え、あの、どういうこと？」

塗「仕事戻るよ。」

塗くんが話を逸らすときは、
大体照れているか思っていることを知られたくないとき。

きっと今のは…照れ隠し。

バタンッと音を残して
出て行ってしまった塗くんの背中に

「ありがとう。」

そう言い、私も仕事へと戻った。

塗くんが撮ってくれた写真は
私の宝物となった。

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