【SLAM DUNK】カフネ前編 (ページ46)

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44.バレンタイン② ページ46

それでもヤキモチという沼にハマらないように

引き上げてくれたのも寿くんだった

『はい。あーん。』

Aの部屋でチョコを咀嚼する。

「うめーな。」
「やっとチョコ食えた。」

他のチョコ食べないでいてくれたんだ。

『あ、ありがとうございます。』

敬語、先に他の食うか気にしてたんだな。
揶揄ってやろ、面白れえからな。

Aの部屋の床に座っている俺の膝を叩く。

さてさて
上手く察せるか？

面白れえな。

『え、膝、痛いの？』

何を察してくれるか？と思って期待してみれば。
みるみる顔を青くさせて、Aが膝を摩る。

「ちげーよ。」

Aの心配してくれる様子が溜まんなくて揶揄い続けていたかったが。
これはまずいと悟って細い腰を掴んで俺の膝の上に座らせた。

青くなっていたはずの顔がどんどん赤く染まる。
ずっと飼いたかった小動物を手に入れた気分だった。

『痛くないの？』

「なんともねえよ。」

『重いよね？』

「それもへーき。」

よかった、と。
Aが細い腕を俺に回して俺にしがみ付く。
抱え直して、Aの額に唇を落とす。

『大好き。』

俺の顔を真っ直ぐ見て、赤い顔で伝えてくる。
俺から仕掛けといてなんだが、まずいと思った。

細い顎を捕まえて、何度か深いキスをする。

「お前、俺がキスとハグで満足するって思ってんのか？」

Aが、自分のベッドを一瞥して、軽く顔を青にする。
百面相め、やっぱりだな。

正直、今すぐにでも、とも思ったんだ。
でもよ。
初めてなら、なんか、ちゃんとしてやりたいな。
大事にする、って約束したもんな。

本当に惚れた弱み、って言うのはよく言ったもんだ。
俺の膝の上で、少し手を震わせたAの頼りない背中を撫でて宥めてやる。

大きな目を少し潤ませて俺をじっと見る。

物足りねえけど、ここまでにしとくか。

「俺が卒業したらよ。一泊どっか行かね？」

『行きたい。
　寿くんの行きたいところがいい。』

顔をぱあっと明るくさせて、クスクスAが笑い出す。

本当に分かってんのか？

まっ、当日、分からせればいっかな。

『楽しみ。』

目をキラキラさせてAが言うから。

頭をいつもみたく撫でてやった。

帰り道、

少しクラクラしちまった。

仕方ないだろ。

精神的に限界だった。

覚えてろよ。