【SLAM DUNK】カフネ前編 (ページ37)

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35.秋の話① ページ37

まだ見せてくれてない表情

まだ聞かせてくれてない言葉

もっともっとずっと欲しい

そう思うのは欲張りだよね

今まで親不孝しちまったからな。

Aがいる、バスケも再開した、大学も行きたい。
だから大丈夫だって、分かって欲しかった。

「俺、親不孝しちまったからよ。」
「会ってくんね？」
「うちの親。」

『はい？』

さすがに親は行き過ぎか？

でもよ…。

『何か好きな食べ物とかある？』

そっちか。

手ぶらでいい。

と言ったが、Aは引かなかった。

『はしめまして。』
『A Aと申します。』
『ご迷惑でなければ召し上がってください。』

挨拶に、靴の揃え方、行き届いている礼儀作法に俺の親が、Aのいない部屋に俺を連れてきて聞いた。

「どうやって頼んできた頂いたの？」

「そろそろ息子を信用しろよ。」

それから、親と俺とAで話しているうちに。

俺を見るAの視線の優しさや。
俺が言うAへの物言いの空気に。

少し安心したような表情を見せた瞬間に口火を切った。

「うちの子のグレてた時期は知ってる？
　その、うちの子のどこが…？」

『その時期のこと、伺いました。』
『そのことが、寿さんの人生において正解かどうかは、今の私には分かりません。
　ただ素敵なご友人に出会われたとは思っています。』

『寿さんには、入院中に出会って、よく笑って話をして頂いて随分救われてきました。
　再会した後も救われることが多かったです。私を曝け出せて、それを否定しないでくださって…。』

『寿さんと過ごす時間が楽しくて、まだ分からない、これからの寿さんを知りたい、知っていたい。
　欲張りなことに、過ごす時間が増すごとに、これからも大切にしていきたいと望んでしまい…今お付き合いさせて頂いています。』

ずっと一緒にいたい、とは言ってたけど、

これからも俺との時間を大切にしていきたい、って

未来を切り開くようなこと、言われるとむず痒いな。

大切に育ててきた俺を肯定するような子でよかった。

また連れて来い、と言われた。

少しは安心もさせられたような気がしたんだ。

Aは、帰りに、出してくれたの何の茶葉かな？

すっごい懐かしい香りがするの。

と目をキラキラさせていた。

紅茶が好き、だもんな。

親に聞いてやろうと思った。