【SLAM DUNK】カフネ前編 (ページ36)

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34.夏が終わる頃の話ページ36

私に触れる寿くんの手は

思えば最初から優しかった

女の子でいさせてくれる手

私も優しく触れ続けたい

守っていきたい大きな手だ

『え、マネージャーさんが2人に？』

日曜日の夜、Aと夕飯を食べていた。

忙しくても、できるだけ会おう。

付き合う時に約束しておいてよかった。

「そ。赤木の妹の晴子がマネージャーに加わったんだ。」
「桜木のやつ喜ぶだろーな。」

ニヤリとする寿くん。
マネージャーが2人になった、と近況を教えてくれている。

『いいな。』

「何がだよ？」

『マネージャーさん。』
『寿くんの近くで練習見れていいなーって。』

か、可愛いこと言うじゃねえか。

「ならよ。」
「たまに俺の朝練とか夜練、外でやるから見とけよ。」
「お前だけで、見とけよ。」

『いいの？』

喜ぶA。

こうして会う約束が、増えていく。

『寿くん。』

「んだよ。」

『私一緒にいられる時間が増えると嬉しい。ありがとう。』

その日の帰り道。

人気がない通りまで行くと、Aは俺に後ろから抱きついてきた。

右腕の肘を摩ってやった。

『それ嬉しい。今までの痛いの、飛んでいきそう。』

ありがとう、ってAが噛み締めるように伝えてきた。

傷はな。
消えないからな。
俺にはこれしかできねえからな。

後ろからAも、俺の膝を摩った。
痛くなりませんように、そう言ってた。

「くすぐってえよ。」

『一緒にいるとあっかい。ありがとう。』

『大好き。』
　

また背中に抱きついてくる。

『やっぱり背中おっきい。すっごい。』

「やっぱりってなんだよ。」

おもしれえな。

そう言って、今度は俺の前に立ち、手をヒラヒラ振りながら伸ばしてきた。

バイバイじゃねえな
俺の腰のあたりの高さで、ヒラヒラさせてる。

「なんだよ？」
「俺は、ほいほいそう言うのは言わないぜ。」

こっぱずかしいじゃねえか。

『手、繋いで、欲しい。です。』

あ、それでヒラヒラ俺の前で手を振ってたのか。

肘摩った後にポケットに入れたからな俺の手。

「ほらよ。」

Aのやることなすこと心地良い。

参ったな。

Aは甘えたりがりで。

ひっつき虫で。

手を繋ぐのが好きだ。

俺もAの子供みたいな手を繋ぐのが好きだった。

まだ秋にはならない頃。

夏が終わる頃の話だ。