【SLAM DUNK】カフネ前編 (ページ31)

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29.三井さんの過去ページ31

私

また女の子になれるの？

また夢を見てもいいの？

夢は今の私に手を振ってくれるの？

18時。
夕飯を食べてくると兄に連絡して。
三井さんと、ご飯を食べている。

「大学の推薦こねーかな。大学でもバスケしてえな。」

最近の俺のあれこれを聞いてクスクス笑っている。

この時間が欲しかったんだ。

さっきまでのイライラが嘘のように沈まる。

『三井さん、受験されないんですか？』

「学力ではノーチャンスなんだよ。黙ってろ。」

ほら、またお前はそうやって楽しそうに頷きながら笑うんだ。

だらしない俺も見せられる。

「Aは？大学でもバスケやるの？」
「まだ来年、3年だし気が早いか。」

あれ？

Aが下を向いて唇を結んでいる。

いつもなら笑うのに。

『私…。』
『私は…終わりにしたくて…。』

「何を？」

『バスケの選手でいることを終わりにしたくて。』

「…それ、本気で言ってんのか？」

頷いて、暫く沈黙が続いた。

もしかしたら

昔の俺なら、怒ってたのかもな。

だから

今の俺なのかもな。

　

「俺さ…無駄にしたと思ってる時間があってさ。」

俺がバスケから離れていたあの時のことを洗いざらい全て打ち明けた。

少し驚く素振りも途中あったが、全部静かに聞いてた。

『話してくださってありがとうございます。』

「怒ったり引いたりしないのかよ？」
「そのフツーじゃねえだろ？体育館のこととか。」

正義感の強いAだから怒るかと思った。

『人生に普通も正解もないでしょう？』

それもまたいい顔で言うんだ。

「あ？なんだよ？それ。」

『三井さんの人生は三井さんにしかできないことだから。』

『三井さんが話してくれた無駄だと思ってる時間も。
　本当に無駄だったかどうか、きっと誰も正解が分からないと思うんです。
　それに過去はもう変わらないから。』

確かにな。

徳男とか。

あの時間がなかったら、今みたいな関係にはならなかっただろうな。

お前とも。

『私が今バスケ選手でいるのを辞めたら、後悔するかも？って思って話してくれたんですよね？』
『ありがとうございます。』
『すごく悩みました…きっと大丈夫になると思います。』

この時に思ったんだ。

敵わない、Aには。

そうやって真っ直ぐで。

素直で。

人のことを思いやって話す。

どう考えても好きだ。