【SLAM DUNK】カフネ前編 (ページ28)

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26.山王戦前夜③ ページ28

女の子だろ

そう言われて嬉しかった

けど

三井さんは私の右腕の手術の跡を見てない

信用してないわけじゃないけど

私が見ても、イヤだな、と思える傷跡で
　

夢見たらいけない、って

自分を制した

女の子になんかなれるわけないよ

私の夢は心の奥に閉まっておかなきゃいけない

初めてくる場所の夜道を好きな人と歩いてるだけでも十分な程に私にとっては都合の良い夢かもしれないと思い、歩きながら自分の頬をつねった。

「なに、やってんだ？」

三井さんに突っ込まれる。
　

『都合のいい夢を見ている気がして…でも痛かったです。』

「そりゃそうだろ。しっかりしろい。」

そう言って、頭をワシャワシャしてくれるから

ますます夢を見てる気分になった。

『緒戦の勝利おめでとうございます。』
『明日、山王戦ですね。』

「お？知ってたか？」

『はい。観に行ってもいいですか？』
　

「おう。」
「Aはよ、大事な試合前にどういう気持ちになるんだ？」

『どの試合でもそうですけど。
　今回のインターハイは今まで以上に。』

　

『精一杯やりきりたい、って思ってます。』
　

「精一杯だ？」
「んなもん、当たり前だろーが。」

『私、試合後に、あの時のプレーがよくなかったな。
　ってクヨクヨしがちなんです。』

『今回は、私の集大成だから、それが絶対ないように。より精一杯やりきりたい、そう思ってます。』
『でも、さっきまで精一杯やりきれるか、不安になっちゃって、つい散歩してました。
　やるしかないですよね。』

『三井さんに会えてなんだか落ち着きました。
　ありがとうございます。』

確かにな。

俺も

あの時

って思うところはあるからな。

『今までの自分にだけは負けたくないんです。』
『もちろん、対戦相手にも。』
『明日、私、精一杯応援してます。』

そう言って

Aはあの小さな拳を俺に差し出す。

グータッチ。

グータッチをしてまた歩き始める。

何が山王だ。

何がレベルの違う相手だ。

何が三連覇の相手だ。

俺だってもう中学だけの財産だけじゃないはずだ。

俺も、あの頃の俺を

超えねえとな。

Aの横顔は月明かりにと

少ない街頭にしか照らされてないはずなのに

凛としていて、眩い程に綺麗だった。