【SLAM DUNK】カフネ前編 (ページ22)

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20.インターハイ開会式前ページ22

三井side

やっと広島に着いた。

正直、挑発されてイライラしたな。

あの週刊誌にも。

けっ。

駅で降りて、各自トイレや飲み物の購入など済ませてから、駅の出口で合流することにした。

出口に向かおうと歩いていたら、壁沿いで何人かで話していた女の子のうちの1人に、わざと男がぶつかって、女の子が倒れかけた。

さっき挨拶してきた豊玉のやつらの1人だ。
どうしようもねえやつ。

「なんや。
　通したってや。」

どう見ても、わざとぶつかっておいて、そりゃないだろ。

『謝ってください。』

角度的に顔がよく見えなかったが知ってる声。

転ばないよう自分より少し背の高い女の子を後ろから支えていた女の子がいう。

Aだ。

　

『わざとぶつかられて、怖い思いをしたのは、私の後輩です。』

「あ？ご、ごっつ可愛い。連絡先交換聞いてええ？」

男が、Aの肩を掴もうとするから、慌てて駆け寄る。

触るなよ。

　

「やめろ。」

「また湘北のやつか…。」
「ほな。可愛いお姉ちゃん。」

さっき監督らしき人にも注意されたからか、試合もあるからか、男は案外すぐに引いた。

『三井さん。』

「あぶねーだろ。」
「ちっとは、考えろよ。」

心配させられた勢いで怒鳴ってしまう。
でも、Aは少し、びっくりした表情で、こう言った。

『す、すみません。』
『でも、後輩がこんな目にあって、見過ごすのは、イヤで。』

「ったくよ。」
「こわくねえの？」

『すっごく、怖かったです。』

それを、いい笑顔で言いやがんのな。

Aが、一緒に移動しててよかったー、自分より少し背の高い後輩の子の頭を撫でながら言う。

俺の心臓が煩い。

「ほんとによ。少しは気をつけろ。」

Aが、心配だったから。

Aの優しさを見たから。

　

『助けて頂いて、ありがとうございます。』

俺はAが自分より他を優先する姿勢に今だにドキドキしていた。

　

「おう。じゃ、俺駅の出口で部活の奴らと合流だから、またな。」

『はい。』
『私たちも集合したら会場に向かいます。』
『また。』

よく見たらAの肩は小さく震えていて。

こわいながらも後輩を守ろうとしたことがわかった。

　
本当はAの頭を撫でたくなったが、理性で制し、俺は駅の出口に向かった。