19.好きになってくれなくていい ページ21
私、恋してる
あの人が可愛く思えて
あの人といると楽しくて
あの人と一緒にいる時間が好きなの
でも好きになってくれなくていい
気付かないで欲しい
好き
インターハイ行きの新幹線の中で『はあ。』と小さくため息を漏らす。
「どうしたの？A。」
「恋のため息？」
「ねっ。これ見て。山王の特集ページ。」
「これ見たら、ため息でるよ♡」
私も恋してるみたいと言いながら、雑誌を抱きしめる隣に座って「はあ。」と、ため息をつく里奈ちゃん。
私、そんな風にため息ついてたのかな？
『山王に好きな選手がいるの？』
ヒソヒソ声で聞く。
「全員。私、男子の坊主頭大好きなの。」
「私の大好きなバスケを、みんな坊主でしてるんだよ。」
「山王戦、観に行こうよー。」
そうだ。
里奈ちゃんは坊主頭フェチ。
確か、湘北が緒戦に勝つと、2回戦で山王と当たるはずだ。
私も観たいな。
『うん。時間的に山王戦の1回戦とか観れそうじゃない？』
「A。里奈。きちんと私たちの対戦相手を優先的にね。」
と、ごもっともな意見をキャプテンから頂く。
「でもさ、観たいよね。山王戦。」
「観たい観たい。深津さん。」
「観たい観たい。沢北くん。」
と、横から違う3年生。
そうこうしているうちに、うちのチームで、山王戦の1回戦は絶対に観に行こうという方針が固まっていた。
監督が、お前ら何を考えとるんだー。
と言ってたけど、絶対に監督も付いてくる。
こういう時に、みんなでワイワイ意見を言いながらも、同じ方向に意見が纏まるのがうちのチーム。
本当にいいチーム。
選手層も本当に厚い。
私にできる精一杯で、今回のインターハイ、このチームと勝って行きたい、そう思う。
大阪駅で停まった時に里奈ちゃんが
「通過したところに豊玉のみなさんいたよ。後ろの方の車両に乗ってるかも？」
「ねえ、名古屋で愛和学院の皆さん見れるかと思ったら見れなかったよね…。」
「はあ…。つまんない。」
と嘆いてた。
本当によくチェックしてる。
車内で、三井さんにメールを送る
移動、お疲れ様です。
明日から試合ですね。
お互い精一杯頑張りましょうね。
三井さんはすぐに返事をくれた。
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作者名：うた | 作成日時：2023年7月15日 22時
