【SLAM DUNK】カフネ前編 (ページ11)

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9.傷跡ページ11

くそ。

なんだよ。

そんなことかよ。

そう三井さんが笑って言ってくれるまで。

自分でもこの傷が入れられなかった。

退院後。
学校から許可を貰ってギプスの入るトップスで登校していいと許可が降りても、なんとなく行くのに気が引けた。

それでも2日ほど閉じこもったら、行こうと決心がついた。

雨の日は、誰かが、昇降口で傘を畳んでくれた。

左手でなんとか読める文字も書けるようになったけど遅くて遅くて、黒板が消されるまでに間に合わないけど、友達がノートを貸してくれた。

全中には行けないまま引退になったけど、引退後もたまにバスケ部を覗くと歓迎してくれた。

骨折して、みんなに迷惑がられると思ったけど、普段話したことない周りの人たちも優しくて救われた。
　

私が傷付き始めたのは

ギプスが取れて、リバビリも進み、日常生活や体育もできる範囲で参加を認められた頃から。

教室に忘れ物を取りに行く時にクラスメイトの会話を聞いてしまった。

「私、体育の着替えの時に、Aさんの腕の傷たまたま見ちゃって、なんかゾワーってしちゃった。」

「私も。なんか、ケロイ◯体質って言うんだって？」

「傷跡が火傷みたいに腫れてて、あれはないよね。」

「ねー。Aさん可愛いし、これから美人になるんだろうけど。あの傷はねー。」

「そうなんだ。男からしても、そういう傷はやだなー。」

「でしょ？よ◯かいみたいでビックリしたもん。」

「あの傷の見た目はないよね。
　顔も性格もいいのに、なんか可哀想。」

「天は何物も与えない。ってやつじゃない？」

「確かにー。Aさん勉強もスポーツもできて可愛くて、私ちょっと妬いてたもん。」

そんなの私が一番分かってる。

こんな傷痕、別に好きで手にいれたわけじゃない。
　
　

私の夢が叶う可能性をなくした気がして涙が出そうになったけど堪えた。

忘れ物を取るのを諦めて、帰った。

それからの私は、傷痕を見られないように腕のサポーターを付けて、隠し始めた。

…………
Aは祖母と暮らし初めてからも暫くは泣き虫でした。
祖母が、辛い時に踏ん張って笑ってみなさい、悲しくなるより笑う方に進みなさいと言われて、できるだけそうして生きてきたので、すぐに怒ったりせず痛みに耐えようとする癖があります。