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残酷で悲しく ページ44

「俺も同じだ。天女なのか分からないと言っておきながら、隙があれば今ならできるって考えてた」
「守一郎!」

三木ヱ門は途中で口籠る。戸惑ったように目線を彷徨わせて、守一郎を掴んでいた手を離す。

「私にそんなことを言う資格はないな」

諦めたように息を吐く。一度私を見て、三木ヱ門は節目がちに語り出した。

「私は機会を伺ってた。4年生は学園長から天女と仲良くするようにと言われていたからな……4年生の中で純粋な友だちとして接していたのはタカ丸さんくらいだ」
「これを見て」

タカ丸が見せたのは、いつも持っているメモ帳だった。
喜八郎が内容を読み上げると、私について色々なことが書いてある。

「僕はね。あんまり戦力になれないのを分かってたから少しでも役に立てるように佐伯さんについてメモしてたんだ」

書かれているのは食べ物の好みや着ていたものについてでなんの役に立つのかは正直分からない。
でも、彼はみんなに協力しようとしていたのだ。私を亡き者にするために、そのためだけにずっと。

「機会があれば全員彼女を殺そうとしていたんですね。学園長の指示とか全部抜きにして」
「全部が全部、同じなわけがない」

眉間にシワを寄せて綾部くんが呟くと、滝夜叉丸が私に向かって、言った。
それなら信頼されていると思っていたあの時間、ずっと彼らは私のことを憎んでいた。傷が抉られている気がする。私は身を縮ませて、次の言葉を待った。

「私は佐伯さんを憎んでいた。それは事実だ。……でも佐伯さんと一緒にいる時間、いつも憎悪に満ちていたかと言われるとそうではなかった」

心が軽くなった。完全に重さが消えたわけではなくて、まだ奥に嫌な感情が残っている。
もう嫌だ。これでは自分の汚い部分を嫌でも自覚してしまう。

「俺は、佐伯さんには生きて欲しかったから裏切ったんです」

能勢くんは話し出す。
彼の言葉は誰よりも単純で、それでいて綺麗だと思った。彼は私を生かそうとしてくれた。一度は殺されそうになったとしても、嬉しいと思わずにはいられない。

「久作、それは僕が」
「不破先輩。俺だって忍びを志して此処にいるんです」

能勢くんは不破くんを見上げる。中在家くんが立ち上がり、彼らの元へと歩いていく。

「責任は私が取る、ですか?」

中在家くんはみんなに深々と頭を下げた。
不破くんと能勢くんは戸惑っている。

「もう、やめてください」

涙を流しながら訴えたのはきり丸くんだった。

生きてほしい→←裏切りは突然



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設定タグ:忍たま乱太郎 , 天女 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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みこち(プロフ) - 小説にも書いてますが、義丸が特に押しキャラです。真面目な話もありますので、お楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 本当に嬉しいご返事感謝します。幾つかありますが、その中に、兵庫水軍を出している奴が二つ程あります。彼らは余り詳しく無いんですが、YouTuberで彼等を見てたらドはまりしてしまって。乱太郎達と一緒に海で戦う姿は特に好きです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません。処女作であり、まだまだ不出来なこの小説を真剣に読んで下さり、とても有り難いことでもあり嬉しいです^ ^みこちさんも小説をお書きになっていらっしゃるとのことですのでお言葉に甘えてお尋ねします(*^^*) (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» みこちさん、コメントありがとうございます!前にもたくさんのご質問ありがとうございました。申し訳ございませんがその話が出てくるのはもう少し先の話になりますので待っていただけると幸いです。更新がとても遅く、ご迷惑をおかけします。 (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - お久しぶりです。更新楽しみにしています。私も、忍たま小説書いてます。よろしければ、お訪ね下さい。前にお聞きしましたが、学園の皆は、きり丸が夢主を無実だと言っているのはいつの場面ですか?できれば知りたいです。 (2019年8月26日 15時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さえき | 作成日時:2018年7月29日 3時

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