庇って ページ42
あの城の城下町は段々と寂れていて、近隣の村にも影響が出ていた。
そこで昔の天女伝説を引っ張り出してきた村の人間がとある学園に天女が現れたという話を聞いた。
話は広まり、その噂には尾ひれがついて城主の元へと届いたのだそうだ。
天女の肉を食べれば不老不死になれる。天女には不思議な力があって、たとえ天女の身体の一部であっても魅了することができる。伝説みたいな話だ。
城主は天女を捕らえて生きたまま四肢を切断しようと提案した。四肢は一族の者に食べさせ、天女は話せないように舌を引き抜いて、身体の一部として多くの人に観賞させようとしていた。
「つまり、引き抜いた舌を見せて人々を魅了させてあの地域から離れないようにしようとしたってことですか」
「……そうだよ。兵助」
質問に答えたのは不破くんだった。中在家くんは喉を抑えて咳き込んでいる。もしかして、大きな声で話しすぎたのかもしれない。
「長次、何で私に黙っていたんだ」
「小平太……」
七松くんの腕を善法寺くんは掴んで首を振った。椅子から浮かした身体は半端な位置で止まって、彼は渋々椅子に座り直す。
「私は、佐伯さんを天に帰そうとした」
「三郎、僕のことを庇うことはないよ」
始めに立ち上がったのは鉢屋くんだった。
みんなの視線が鉢屋くんへ向く。その後、不破くんが立ち上がり、側に寄り添うようにして彼の隣へと行った。
何かを言おうとする鉢屋くんを座らせて、安心させるように頷く。
「僕は今回のことで裏から手を回していたんだ」
彼はこんな顔で笑う人間だっただろうか。私はタンポポの綿毛のように笑う人間だと思っていた。今の彼の笑顔は無機質で考えていることが読み取れない。
「僕が持ちかけた。計画は中在家先輩と僕が練ったんだ。僕が彼女を図書室に呼び出して、中在家先輩が帰り際に殺す」
「でも道は2つある。分身ができるわけでもあるまいし中在家先輩がいない道に行ったらどうなるんだ」
「八左ヱ門、それは賭けだったんだよ」
不破くんの言葉に違和感があった。私を図書室まで連れてきたのは不破くんではなく、能勢くんだ。
あの時、能勢くんが背中を押してくれなかったら、私は自分の部屋に帰る為に反対方向へ進む予定だった。
確実に殺されていたんだ。
私がそう訴えようとすると隣に座ったきり丸くんが、先ほどの不破くんと同じように首を振る。
言うな、と伝えようとしていることが分かった。能勢くんは黙って、不破くんだけを見つめていた。
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みこち(プロフ) - 小説にも書いてますが、義丸が特に押しキャラです。真面目な話もありますので、お楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 本当に嬉しいご返事感謝します。幾つかありますが、その中に、兵庫水軍を出している奴が二つ程あります。彼らは余り詳しく無いんですが、YouTuberで彼等を見てたらドはまりしてしまって。乱太郎達と一緒に海で戦う姿は特に好きです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません。処女作であり、まだまだ不出来なこの小説を真剣に読んで下さり、とても有り難いことでもあり嬉しいです^ ^みこちさんも小説をお書きになっていらっしゃるとのことですのでお言葉に甘えてお尋ねします(*^^*) (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» みこちさん、コメントありがとうございます!前にもたくさんのご質問ありがとうございました。申し訳ございませんがその話が出てくるのはもう少し先の話になりますので待っていただけると幸いです。更新がとても遅く、ご迷惑をおかけします。 (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - お久しぶりです。更新楽しみにしています。私も、忍たま小説書いてます。よろしければ、お訪ね下さい。前にお聞きしましたが、学園の皆は、きり丸が夢主を無実だと言っているのはいつの場面ですか?できれば知りたいです。 (2019年8月26日 15時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さえき | 作成日時:2018年7月29日 3時