何故か忍たま乱太郎の世界にトリップしたら天女になったみたいです４

裏山にて ページ5

酸欠をおこして頭がくらくらする。
足から力が抜けて芝生へと寝転んだ。
意味もなく空を見上げると無性にやるせなくなって自身の手で目を覆う。
情けない声が出た。そんな声と同じように冴えない顔をしているだろうことは想像できて、芝生の上で寝返りを打つ。
私はこんなに弱かったんだ。
戸惑っていて悲しそうで憐れみを含んだ視線。生きていれば傷つくことも悲しいことも人並み程度にあって、あの視線を幾日か向けられて耐えられずに皆の声を振り払った。
できることなら身体が重くて指一本だって動かしたくない。




「……何をしているんですか」

心臓が止まるかと思った。
目線だけ相手へ向けると見覚えのない顔がそこにあった。
少年というよりも青年と言うべきか。忍たまたちより大人びた顔に茶髪がよく似合っていて、当のご本人はというと困ったように笑って私を見ていた。

「特に何もしていませんよ」
「貴方は女人なのですから……お召し物が汚れますよ」
「寝転んだら汚れるのは当然ですよ」
「それは驚いた」

そう言うと彼は私の隣に寝転んで私の方を見ながら微笑んだ。この人も顔がいいな。

「あぁ、自己紹介が遅れてすみません。私は山田利吉と言います」
「……佐伯 柳と言います」

今更ながら自己紹介をして、見知らぬ人と言葉を交わしていたのだと改めて実感した。
彼はそれを微塵も感じさせない振る舞いで話を続ける。

「貴方は私が想像していた人とはかけ離れているらしい」

重い気分が少しだけ良くなって会話を楽しもうかと純粋に思い始めた時だった。


「提案があります」


風を切るような音がした。
その音に目を見開くと、彼は少し動いたら私の首が血を流しそうな距離感で苦無を構えている。上は彼が視界いっぱいを埋め尽くしていて、空も見えない。押し倒されたような体制に身をよじることも出来ない。

「……山田、利吉さ」

ご丁寧にフルネームを言っている場合ではないことは私にだって分かってる。
少しでも時間稼ぎしたくて、とっさに出たのが本名だっただけだ。

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