何故か忍たま乱太郎の世界にトリップしたら天女になったみたいです４

不安定な視界 ページ35

首やら腕やら足やらがぐらぐら揺れる。
米俵よろしく抱えられているなら当然だけど他に持ち方はなかったのか。
それに私を抱えて走り続ける七松小平太は何処へ向かっているんだ。そう思って口を開けば、「舌を噛んでもいいのか」、「落とすぞ」と脅しとも取れる口調で手短に黙らせようとしてくる。
此処に来るときに裏山への道を通ってきたのは分かっている。
ただ此処は裏山なのか裏々山なのか裏々々山なのかはたまたもっと先なのかは分からないままだ。
止まろうとしない七松くんの揺れる髪の毛を引っ掴んでも彼は止まろうとしないので強めに引っ張る。

「いだいいだいいだい！！」

堪らず七松くんが立ち止まって私を米俵のように抱えるのを辞めてくれた。強く引っ張りすぎたらしい。

「じっとしていろ！」
「何処に向かっているんですか」
「あれ、何処だ此処は！！」
「……もしかして」
「迷ったな！」

彼自身も何処へ向かっているのか分かっていなかった。しかもこの場所に見覚えがないようだ。

「裏山からは同じような道が続くからな！適当に進んでおけば着くだろ」
「どっちに進みましょうか」
「それより腹が減ったな」
「どうするんですか」
「どうしような！」

ずっと同じ会話がループしている。

「道は分かるといえば分かる」
「戻らないんですか」
「でも、戻るのはまずい」

迷ったと言ったかと思えば道が分かると言いだす七松くん。
そこを突くとうんうん唸りながら中在家くんの名前を呼ぶ。しつこく聞きすぎてもどうかと思って様子を伺っていると彼は急に頭を上げて私を見る。
思わず距離を取るとその距離を詰めるように私の両肩に手を置いて顔を近づけた。
後ろに下がっても彼は私から手を離そうとしないので妙な体制のまま、私は後進、彼は前進を繰り返すだけだった。
ふざけてるのか、と聞かれたがこっちが聞きたい。何してんだこの人。

「もしもの話だ。もしも大事な人が何かに狙われているとなったらどうする」
「はあ」
「その時、お前ならどうする」
「私も一緒に戦います」

七松くんはふぅ、と息を吐くと私の肩へ置いた手を離した。
お遊びはここまでだとか言い出さないだろうな。こっちだって精一杯なんだ。

「お前は素直に守らせてくれないんだったな」

髪の毛がかき回されて、文句のひとつでも言ってやろうかと思っても、彼の笑顔を前にして何も言えなくなった。

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