転がり込んだその先は ページ33
「何だ。その顔は」
声をかけてきたのはそっちじゃないか。不機嫌そうな顔をしてるのはそっちだし、それは私が聞くことだ。
その言い方だとまるで私が無理に呼び止めたみたいだ。
「話は後だ。こっちに来い」
腕を掴まれて引っ張られる。連れてこられたのは生活感のする部屋だった。
部屋の前にかけられた札には潮江文次郎 立花仙蔵と書かれてあるし、彼らの部屋なんだろう。
部屋の押入れを開けたので何かあるのかと覗き込むとそのまま私は押入れに押し込まれる。
何をされるか分かったものじゃない。だから、私は手足をばたつかせて必死に抵抗した。彼の手は私を押さえつけてはいるものの、痛くないように加減している。
「頼むからじっとしてろ」
強制じゃない。お願いだった。
私を押入れの奥に追いやり、隠すように前に荷物をおき始めた。どんどん視界が暗くなり、何も見えなくなってからやっと尋ねる。
「潮江くん、何で」
「迎えが来るまで静かにしてろ」
迎えってなんだ。天からか。餓死しろってことか。それに何の説明もなくこんなことされてそう言われても。心の中で悪態をつきまくっても、そんなに仲が良いわけじゃない。根がチキンだから言えないとも言う。
むっとして彼に続けて声をかける。
「納得できないのも仕方ない思いますけど」
「だから、静かにしろって」
「目が暗闇に慣れていないので」
「……心細いか?」
「いえ、全く」
素直にそう言えば良いとは分かっていても喉でつっかえて出てこない。逆のことなら山ほど言えるのに、天邪鬼だ。
いきなりのことで戸惑っているし、それに周りに何があるのか分からないし、心細いのは当然だと思う。
年頃なので泣きわめいたりもできるわけもない。恥じらいくらいはある。
「良い、というまで出るなよ。絶対だぞ」
私の返事に安心したのか彼は部屋から出て行ってしまった。
咳一つ満足にできない程に威圧感のある言い方。従うほかないとは思うが周りに何か使えるものがあれば手に入れておくべきだろう。
暗闇の中、手を動かせる範囲が限られる状況で音を立てないように動く。動いてみたところで周りが見えないと何もできないので目が慣れるのを待っていた。
外が騒がしい。
何かあったのだろうか。
また前のようになっていないだろうか。
体当たりをかまそうとして、あたりを確認する。
目が慣れてきて見えたのは私の隣に置いてある生首だった。
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みこち(プロフ) - 小説にも書いてますが、義丸が特に押しキャラです。真面目な話もありますので、お楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 本当に嬉しいご返事感謝します。幾つかありますが、その中に、兵庫水軍を出している奴が二つ程あります。彼らは余り詳しく無いんですが、YouTuberで彼等を見てたらドはまりしてしまって。乱太郎達と一緒に海で戦う姿は特に好きです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません。処女作であり、まだまだ不出来なこの小説を真剣に読んで下さり、とても有り難いことでもあり嬉しいです^ ^みこちさんも小説をお書きになっていらっしゃるとのことですのでお言葉に甘えてお尋ねします(*^^*) (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» みこちさん、コメントありがとうございます!前にもたくさんのご質問ありがとうございました。申し訳ございませんがその話が出てくるのはもう少し先の話になりますので待っていただけると幸いです。更新がとても遅く、ご迷惑をおかけします。 (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - お久しぶりです。更新楽しみにしています。私も、忍たま小説書いてます。よろしければ、お訪ね下さい。前にお聞きしましたが、学園の皆は、きり丸が夢主を無実だと言っているのはいつの場面ですか?できれば知りたいです。 (2019年8月26日 15時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さえき | 作成日時:2018年7月29日 3時