何故か忍たま乱太郎の世界にトリップしたら天女になったみたいです４

☆ ページ25

「綾部先輩」

せっかく気持ち良く穴を掘ってたのに。
面倒だと思いながら上を見ると下級生が立っていた。忍び装束の色から２年生だと言うことが分かるが、外はもう暗くなっていて足元だけが見えただけなので学年は分かっても誰だか分からない。

「穴を掘って下さい」
「穴なら僕はもう掘っているじゃない」
「……人を埋める穴です」

下級生が何を言っているんだろう。人を殺める実習はまだ先のはずだ。何かあったのか聞いてみても「見たら分かります」の一点張りで、渋々穴の中から這い出ると男物の袴を纏った人が倒れていた。

「君がやったの？」

彼は僕の目を見て頷いた。
嘘だ。下級生の力で人１人をこんな辺鄙なところにまで運べるわけない。
本当に殺したのがこの子だとしても、ここまでこの人を運んだ誰か共犯者がいるはずだ。
適当に返事をして、倒れている奴を担ぐ。男にしては軽くて弱そうだとは思った。けど、何の疑問も感じないまま、どこかしらで見たことのある下級生を連れ回しながら歩き続けた。

「ここでいいか」

肩に担いだ奴を乱暴に下ろすと下級生は「もっと優しく扱って下さい」と言い出した。「もう死んでるんでしょ」と言うと下級生は「それでも」とか「嫌いではなかった」とか言い澱みながらそっぽを向いてしまう。
そういえば２年生は巷でツンデレ学年と呼ばれているんだっけ。本心ではかなりこの人のことが気に入ってたんだろうな。なんで殺したんだろ。

「それならどうしてこんなことしたのさ」
「それがこの人のためだからです」
「ふぅん」

まあ、もうやっちゃったことだからそうは言っても仕方ないけど。
そんなことでこんな目に遭った藍色の袴の彼を見て、少しだけ可哀想に思った。だって、僕ならそんなことで殺されるなんて絶対に御免だ。
穴が掘り終わったと言うと念の為、もっと深く掘って欲しい。誰にも見つからないように。と用心深い要望がきた。面倒だと思いながらも穴を掘ったり、トラップを仕掛けたりするのは好きだし、辺りに落とし穴だったり、仕掛け罠も張り巡らせる。満足した小さな依頼人は安心した顔でお礼を言った。
肝心の死体はまだ埋めていないのに。この子はかなり真面目な子らしい。苦労をよくかけていただろう同じ委員会の予習好きの後輩のことを思い出して、かき消すみたいに頭を振った。

「で、君誰だっけ」
「……２年い組の能勢久作です」

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