善法寺伊作と私 ページ20
7人目の天女は誰が殺したのかな
善法寺伊作はもう一度私に問いかけた。
とはいえそう言われても私は答えが全く分からないのだから、たとえ何も知らないと言われようとも素直に答えるしかなかった。
「……分かりません」
「へぇ。僕たちも分からないんだよね」
同じようなことを繰り返しているだけなのになんなんだろうこの威圧感。
腹の内を探る視線が何往復かしたかと思えば彼は突然いつもみたいに笑ってみせた。
「変なことを聞いてごめんね」
人の良くみえる微笑みを貼り付けた彼が頭を撫でようとのばした手を掴むと彼は驚いたように目を少し見開いた。
「7人目の天女に何があるんですか」
7人目にやってきた天女は私の筈だ。謎が多いのは6人目の天女の筈だ。
この機会を逃してしまったらもう二度と聞けない。
せっかく善法寺くんから話を振ってくれたんだ。このチャンス、棒にふるわけにはいかない。私は知らないといけないんだ。
「聞きたい?」
「聞きたいです」
「落ち着いて。まず手を離してくれないかな」
その言葉に首を振って彼を方を見る。
「嫌です」
「強情だね」
「だって離したら逃げるじゃないですか」
この人の本心は全く予想できない。でも逃すものかと自由だったもう片方の手も動員して腕を掴んで「逃げないよ」と言われても手を離さぬまま彼の方を見る。
そのうち彼から湧いた苦笑は本心からのものだと思いたい。
「佐伯さんは知りたがりだね」
だんまりを決め込む。
たとえそれが本音から出た言葉で反応してしまえば会話の主導権を握られて、あっさり別の会話をしてしまいそうだからだ。
「今の言葉は本心からだよ?……7人目の天女のことについて僕らは何も知らないんだ」
「本当に何にも、ですか」
「うん。本当に何にも」
話す気はないと。分かったのはそれだけだ。
「僕はね。みんなで幸せになりたかっただけなんだ」
それはみんなそうじゃないですか。
「これから幸せになるために全てを知りたいんだ」
だから、貴方は私に聞いたんですか。
「たとえ短い間だけだとしても」
ああ、彼はあと1年しかないのか。
「別れるのが惜しくなっても」
彼の中ではもしかしたらこのまま別れるよりも仲直りして別れる方が別れが辛くなるのかもしれない。
「僕はみんなと一緒に幸せになりたい」
彼の言う幸せが、何を指すのか私には分からなかった。
誰より厄介なのはこの人なのかもしれない。
338人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みこち(プロフ) - 小説にも書いてますが、義丸が特に押しキャラです。真面目な話もありますので、お楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 本当に嬉しいご返事感謝します。幾つかありますが、その中に、兵庫水軍を出している奴が二つ程あります。彼らは余り詳しく無いんですが、YouTuberで彼等を見てたらドはまりしてしまって。乱太郎達と一緒に海で戦う姿は特に好きです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません。処女作であり、まだまだ不出来なこの小説を真剣に読んで下さり、とても有り難いことでもあり嬉しいです^ ^みこちさんも小説をお書きになっていらっしゃるとのことですのでお言葉に甘えてお尋ねします(*^^*) (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» みこちさん、コメントありがとうございます!前にもたくさんのご質問ありがとうございました。申し訳ございませんがその話が出てくるのはもう少し先の話になりますので待っていただけると幸いです。更新がとても遅く、ご迷惑をおかけします。 (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - お久しぶりです。更新楽しみにしています。私も、忍たま小説書いてます。よろしければ、お訪ね下さい。前にお聞きしましたが、学園の皆は、きり丸が夢主を無実だと言っているのはいつの場面ですか?できれば知りたいです。 (2019年8月26日 15時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さえき | 作成日時:2018年7月29日 3時