同室と私 ページ19
「あ、佐伯さん」
目があってすぐ善法寺伊作は声をかけてくる。大量の包帯を持って足元が見えにくかったのか、包帯とともに彼の身体は穴の中に吸い込まれていった。
「伊作ーー!!」
屋根の上から飛び出してきたのは食満留三郎くん。私の目の前で善法寺くんを救助する。一瞬目があったけど、気まずそうに逸らされた。
「……逃げないの?佐伯さん」
頷くと心底安堵したような顔で「そっか」と呟いた。彼を引っ張り上げた食満くんは驚いた顔で私のことを見据えて口を開く。
「俺たちが怖くないのか」
「もう十分逃げましたから」
彼らは顔を見合わせて、少しだけ笑った。
「君は覚悟を決めたってことでいいのかな」
「……伊作。お前」
「留三郎は待ってて。……ごめんね。佐伯さん、今までのこともこれからのことも」
善法寺伊作という人間は食満留三郎に対してこう言い放つことはあっただろうか。前なら彼らが一緒にいる時はもっと緩やかな雰囲気に包まれていたはずなのに。
「本当に申し訳ないことをしたと思ってる。一方的に謝っておいて何だけど、君は何処まで知っているの」
居候期間中、忍たまたちやその他の多くの人に話を聞いた。何から話せば良いかと思考を巡らせていると彼は私の考えを読み取ったのか苦笑いを浮かべて私に問う。
「違うよ。僕は全てを知った上での君の出した決断を知りたいんだ」
そう言う善法寺くんの瞳には私しか写っていなくて背中に寒気が走る。その様子にあっけらかんと答えてしまっていいのか戸惑った。
「伊作。もうやめろ」
「留三郎だって聞きたいでしょ」
「今聞くようなことじゃない」
食満くんは善法寺くんの方を掴み、首を振る。善法寺くんは自身の肩におかれた食満くんの手を払って私に向かって言い放つ。
「まあ、そうだけどね。……そもそも佐伯さんが全てを教えてもらえたのかも、怪しいから」
刺々しい雰囲気に気がついたのか食満くんが私たちの間に入る。その様子は何かを恐れているようで、無理矢理にでも聞き出した方がいいのか、放っておいてもいいのか分からなくなってしまった。
「多分僕は佐伯さんよりも色んなことを知ってる」
食満くんは肩を震わせている。
「でもね。1つ気になることがあるんだ。知っていたら正直に答えてね」
善法寺くんの瞳はすうっと細められて、唇は弧を描いていた。
「7人目の天女は誰が殺したのかな」
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みこち(プロフ) - 小説にも書いてますが、義丸が特に押しキャラです。真面目な話もありますので、お楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 本当に嬉しいご返事感謝します。幾つかありますが、その中に、兵庫水軍を出している奴が二つ程あります。彼らは余り詳しく無いんですが、YouTuberで彼等を見てたらドはまりしてしまって。乱太郎達と一緒に海で戦う姿は特に好きです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません。処女作であり、まだまだ不出来なこの小説を真剣に読んで下さり、とても有り難いことでもあり嬉しいです^ ^みこちさんも小説をお書きになっていらっしゃるとのことですのでお言葉に甘えてお尋ねします(*^^*) (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» みこちさん、コメントありがとうございます!前にもたくさんのご質問ありがとうございました。申し訳ございませんがその話が出てくるのはもう少し先の話になりますので待っていただけると幸いです。更新がとても遅く、ご迷惑をおかけします。 (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - お久しぶりです。更新楽しみにしています。私も、忍たま小説書いてます。よろしければ、お訪ね下さい。前にお聞きしましたが、学園の皆は、きり丸が夢主を無実だと言っているのはいつの場面ですか?できれば知りたいです。 (2019年8月26日 15時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さえき | 作成日時:2018年7月29日 3時