斉藤タカ丸の昔噺 ページ12
ある日のこと。同級生から空が光った、と聞いた。雷か何かだろうから心配することはない、と答えても皆「天女様だ」の一点張り。転入して学園に慣れてきたはずだったけど知らないことはある。でもそれとともに知っていこうと思っていて、同級生も優しく教えてくれたから学園生活はとても楽しいものだった。
「ねえ、三木ヱ門。天女様って何?お祭りとかあるの?」
「……とても恐ろしい奴ですよ。お祭りどころではありません」
側にいた三木ヱ門に聞いてみても「まさかこんなに早くくるなんて」と呟いていて、その後彼がはっとしたように僕を見て、急いで説明を始めた。
ひとつ。妖術に注意すること。
「天女様は妖術が使えるの?」
「はい。何でも効きやすい人と効きにくい人がいるのだとか」
ふたつ。今までを思い出すこと。
「今までって?」
「タカ丸さんは転入生ですからね。知らなくて当然です……彼奴のせいで上級生と下級生との仲が悪くなったことがあったんですよ」
みっつ。彼奴は天女ではないこと。
「天女様って呼ばれているのに?」
「えぇ。そう呼ばれていますが彼奴がやることは伝説の天女のやることじゃない」
言われたのはそれだけ。
妖術に気をつけてなんて言われたって何に気をつければ良いのか分からなくって、今までを思い出せと言われても思い出すことなんてなくって天女様なのに天女じゃないと言われても本当にどうなっているのか分からなかった。
懸命に言葉を噛み砕いても分からない。
駄目だなぁ。僕は。
メモを取った。でも、誰が読んでも的外れだと言われてしまう書いた内容に正直自信はなかった。
三木ヱ門は他にも沢山説明をしてくれて、他の人も沢山説明をしてくれた。でも誰に聞いても分からない。取ったメモを繋ぎ合わせても分からない。
結局分かったのは僕が妖術にかかって全てが終わった後だった。
僕は一体何をしていたんだろう。
何も思い出せない。
どっと押し寄せてくるのは激しい後悔。
何で分からなかったのか。どうして予想出来なかったのか。
あの人は天女様じゃない。あんなの人でもないかもしれない。
下級生は泣いていた。
「……何があったの」
答えはなかった。彼らは何も言わずに去って行ってしまった。
風の噂で妖術にかかった僕たちは天女様につきまとっていたことを知った時も自分が何をしていたのか思い出せなかった。
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みこち(プロフ) - 小説にも書いてますが、義丸が特に押しキャラです。真面目な話もありますので、お楽しみ頂けたら幸いです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - 本当に嬉しいご返事感謝します。幾つかありますが、その中に、兵庫水軍を出している奴が二つ程あります。彼らは余り詳しく無いんですが、YouTuberで彼等を見てたらドはまりしてしまって。乱太郎達と一緒に海で戦う姿は特に好きです。 (2019年9月20日 6時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» 返信が遅くなってしまい、申し訳ございません。処女作であり、まだまだ不出来なこの小説を真剣に読んで下さり、とても有り難いことでもあり嬉しいです^ ^みこちさんも小説をお書きになっていらっしゃるとのことですのでお言葉に甘えてお尋ねします(*^^*) (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
さえきやなぎ(プロフ) - みこちさん» みこちさん、コメントありがとうございます!前にもたくさんのご質問ありがとうございました。申し訳ございませんがその話が出てくるのはもう少し先の話になりますので待っていただけると幸いです。更新がとても遅く、ご迷惑をおかけします。 (2019年9月20日 0時) (レス) id: d037e4ab14 (このIDを非表示/違反報告)
みこち(プロフ) - お久しぶりです。更新楽しみにしています。私も、忍たま小説書いてます。よろしければ、お訪ね下さい。前にお聞きしましたが、学園の皆は、きり丸が夢主を無実だと言っているのはいつの場面ですか?できれば知りたいです。 (2019年8月26日 15時) (レス) id: 3f5bca2fa0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さえき | 作成日時:2018年7月29日 3時