君にみえるもの [５]

━14━ ページ15

UDIに着き車を降りる｡

貴｢今日は色々ありがとう｡
またよろしくね｡｣

木｢はい､こちらこそ｡
あ､君塚さん｡気をつけて下さいね？｣


また掴みどころのない笑顔を向けられ
何のことか分からず 困っていると
“でわ”と一言 言って彼の車は走りだした｡



⋆ ･⋆ ･⋆ ･⋆


貴｢ただいまでーす｣


ラボに入ると所長室にお酒を飲む
中堂さんと所長の姿があった｡


神｢あ！おかえりなさい！
お疲れ様でした｣


そう言って所長は
私が帰って来るのを待っていたかのように
そそくさと帰って行った｡


中｢男に人工呼吸したんだって？｣

焼酎の入ったグラスを見つめながら
聞いてくる彼に､もう嘘はつけないと確信した｡


貴｢いったい誰から...｣

中｢木林だ｡｣


南雲め...後で覚えとけよ｡

なんて油断していると､
腕を引かれて彼の膝の上に座らせられる｡


そのまま頭を撫でられ､
後頭部に回った手で頭を固定されて 唇を奪われる｡
そこから微かにこぼれるアルコールの香りに酔ってしまいそうだ｡


中｢上書き｡｣


妖しく微笑む彼にたまらなくなって
話題を変えようとする｡


貴｢あ､ジャケットありがと｡｣


脱いで彼に返すと､彼はそのジャケットを見つめた。


中｢男の匂いがする｡
...どこで付けてきた？｣


ジャケットで男の人...となると
ビルから去る時の岩永さんしか思い浮かばない｡

包み隠す全て話すと
彼は私の首筋に吸い付いて痕を残した｡


中｢ったく...だからもっと警戒心持て バカが｡｣


軽く酔った彼にはかないそうもない｡

作者より》→←━13━

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す