人混みに消える ページ16
それからたこ焼きを食べたり、焼きそばを食べたり、色んな屋台を回った。
｢はぐれたら危ないから｣って途中で繋がれた手。
屋台で何かする度離されるその手は終わった後もしっかり握ってくれた。
｢もうちょっとで花火やなぁ｣
｢うん｣
なんて会話をしながら花火がよく見えるポイントに移動する。
決して人が少ない訳じゃないそこに運良く2人分座れるベンチを見つけた。
2人してそこに腰を下ろす。
さすがに手は離れてしまった。
歩き疲れたな、ってこっちを向いて笑う崇裕くんは提灯の明かりに照らされてて
それが雰囲気を作った。
ここに来る前に買ってもらったりんご飴を齧る。
｢んはは、Aもべっぴんさんになったと思ったけど、まだまだ子どもらしいな｣
まだ1人の女性として見られてないらしい。
単なる年下の従兄妹といったところやろうか。
｢崇裕くんは年下の女の子を恋愛対象として見れる？｣
突然のことに驚いたのか、え、と声をもらす。
こんなことで少しでも意識してもらえるやろうか。
｢んー、恋愛に年齢は関係ないからな｣
大人な回答が返ってきた。
じゃあ、とベンチの上で崇裕くんの方に少しだけつめる。
今なら言える。
なんとなく咄嗟にそう思ってしまった。
言ってもなんもないのに。
今まで守り続けてきた関係が壊れる怖さなどこの時の私には微塵も感じなかった。
．
｢私、崇裕くんのこと｣
．
ドーーーーーーン
わぁと周りの人が歓声をあげる。
真っ赤に照らされる夜空。
それが一瞬にして散りゆく様。
今の私みたいやった。
｢わぁ綺麗やなぁ！！｣
咄嗟に話題を花火に移す。
｢ほんまやなぁ｣
普通に返事してくれる崇裕くんは私よりずっと大人やったらしい。
花火の光に照らされる崇裕くんの横顔は
私の初恋の1番最後の思い出
．
になるだろう。
____ 初恋は叶わないらしい
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作者名：ころ | 作成日時：2020年8月8日 23時
