駄菓子が10と6つ ページ17
「休憩しなくていいのかい?」
美術のポスターの下描きをし始める僕を見て、お兄さんが訊いてくる。確かに、さっきワーク類が終わって間もあけずに画用紙を持ってきたけど。まあ、この宿題をやるのが休憩だ。適当にやっておけばいいし。
それより、ばあちゃんちに画用紙と絵の具道具があって良かった。
「だいじょーぶ」
お兄さんに見向きもせず、鉛筆を動かす。
「何を書くの?」
「オレオレ詐欺の防犯ポスター」
「オレオレ詐欺…」
お兄さんは、なにか考えるように僕の言葉を復唱した。
「…どうしたの?」
「オレオレ詐欺と言えば、随分前、幸さんが引っ掛かりそうになっていてね。」
「えっ、そうなの?」
ばあちゃんがオレオレ詐欺に引っ掛かるなんて、槍が降るくらいのことだぞ…?
純粋にそんなことが身内で起きていたことに、驚いた。
「…そう。あれは、木々の葉が全て落ち切り、枯れ葉となってしまった、そんな冬の時期だった___」
…あれ、回想始まった?
懐かしい思い出を話すかのように、うっとりとした表情をしている。この男。
***
私は、毎日のように幸さんのお店(ここ)に訪れていてね。
その日も、いつも通りお店に顔を覗かせて、幸さんに挨拶をしたんだ。
「幸さーん。こんにちは!」
しかしね、幸さんの様子がどうもおかしかったんだ。
どうしたのか聞くと、お孫さんが仕事が出来なくなって路頭に迷ったからお金を貸してほしい、と電話で頼まれたらしいんだ。
幸さんは、棚やらカウンターやらを漁って名一杯のお金を抱えてお店を飛び出そうとしていたんだ。
怪しい。そう直感的に感じた私は、幸さんを止めた。
「ちょっと何処へ行くんですか! まず、落ち着いてください。少し遅れただけで、お孫さんは簡単に死にはしませんから。」
私がそう言うと、はっと落ち着きを取り戻して、瞳に私を捕らえた。
「…一郎くん、アタシ…」
「幸さん。電話の相手は本当にお孫さんですか」
私の問いにしばらく考えた後、幸さんは狼狽えながらもすぐ詐欺に引っ掛かったことを理解したんだ。
「…一郎くん。ありがとうね。危うくアタシの全財産を知りもしない野郎に渡すトコロだったねェ」
「アタシの孫で働いてんのなんて、一人の孫娘しかいなかったわァ。アーアー…アタシとしたことが、こんな分かりやすい嘘に騙されるなんで…堕ちたねェ…」
幸さんは賢い方だ。だから、この詐欺もすぐ解決したよ。犯人がどうなったかは知らないけれどね。
***
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壱(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます(*^^*) (2019年11月2日 22時) (レス) id: 16a8646f1c (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - 主人公の言葉に凄い笑いました笑笑 (2019年10月27日 8時) (レス) id: 92785b223f (このIDを非表示/違反報告)
アリア - 壱さん» 一人でテンション上がりまくってました!あと15ってショタじゃない気してきました... (2019年7月29日 11時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
壱(プロフ) - アリアさん» 気づいてしまいましたか…!(嬉)主人公がひっそりいました。 (2019年7月28日 19時) (レス) id: 16a8646f1c (このIDを非表示/違反報告)
アリア - 今気づいたけど設定2に[先輩を攻略するのは難しい]メンバーがいる!今ごろ気づいた! (2019年7月27日 10時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひぃ | 作成日時:2019年2月25日 21時